研究実績の概要 |
長野県花き栽培試験場(長野県塩尻市)の長期連用圃場(70年以上にわたり施肥状況が固定されている土壌)の畑土壌黒ボク土12サンプルについて、16S rDNA(バクテリア・アーキア群集)、18S rDNA(真菌群集)、陸域で優占するとされる菌体外ホスファターゼ遺伝子phoDの組成を、次世代シーケンサーを用いたamplicon sequencingで解析した。 16S rDNAの群集組成、phoDの組成、18S rDNAの群集組成はいずれも、窒素施肥状況ならびに、その影響を受けていると考えられる土壌pHに強く依存し、リン施肥の状況、可給態リン濃度、酵素活性との間に明確な関係は見られなかった。 日本国内8地域(北海道・東北・関東・中部・九州)から採取された、母材・気候条件・利用状況を異にする黒ボク土畑土壌45サンプルに対して、土壌酵素活性・理化学性を測定するとともに、16S rDNA、18S rDNA、phoDの組成を、次世代シーケンサーを用いたamplicon sequencingで解析した。その結果、①16S rDNA、phoDの組成は土壌pHによって強く規定されていた。また、②16S rDNAに比べて、phoDはサンプル間のOTUの入れ替わりが大きい傾向が見られたほか、③16S rDNAの組成の類似度と、phoDの組成の類似度の間には有意な相関は見られなかった。一方、④アルカリホスファターゼ(ALP)・酸性ホスファターゼ(ACP)活性のβ-D-グルコシダーゼ(BG)活性に対する比(ALP/BG, ACP/BG)と、可給態リン・水溶性リン濃度のあいだには相関は見られず、単純なresource allocation modelは妥当しなかった。しかし、⑤pHや16S rDNA組成を含めた交互作用付き重回帰分析によると、可給態リン濃度と酵素活性比ACP/BGのあいだの関係は、pHあるいは16S rDNAの組成によって変化することが示され、既存のresource allocation modelに対する修正の可能性が示唆された。
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