研究実績の概要 |
本研究では、糸状菌のα-1,3-グルカン(AG)が細胞接着を介して菌糸塊形成する機構の解明を行っている。本年度は、AG合成関連酵素が、AGの分子量を調整していることを明らかにした。 1) AgtAの精製と糖転移産物の解析~Pichiaで発現・精製したAgtAの糖転移反応を解析した結果、maltopetose(5糖)およびmaltononaose(9糖)を基質としてendo型切断活性を示すと共に、糖転移により10糖以上のオリゴ糖を生成した。AgtAは5糖よりも9糖の方に基質特異性が高いことが示唆された。AgtAは、1,3の転移ではなく、AGの中の1,4-結合のスペーサーを切断することでAGの分子量を調整している可能性が示唆された。 2) AGの化学構造と凝集性の解析~A. nidulans agsAΔagsBΔ二重破壊株に、agsAまたはagsBを単独発現させて、AGを精製してその化学構造を解析した。両酵素で合成されるAGは、90%以上1,3-結合であり結合様式には差が無く、精密ゲルろ過解析によりAgsAの合成するAGの分子量は約150万、AgsBの合成するAGは約40-50万の分子量で、AGの分子量により接着性に差があることが明らかになった。また、1,4結合を選択的に分解するスミス分解法でAGを解析したところ、両酵素で作られる、AGはいずれもα-1,4-結合からなるオリゴ糖スペーサー(AgtAの基質)を有し、α-1,3-結合部位はDP=200であり、分子量差はα-1,3-glucanユニット(DP=200)の繰り返し数の差であることが明らかになった。以上、AG合成酵素が、酵素オルソログ間で分子量の異なるAGを合成することを世界で初めて明らかにしした。
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