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2014 年度 実績報告書

mRNA fluxの改変による酵母アルコール発酵能とストレス耐性の飛躍的改良

研究課題

研究課題/領域番号 26292039
研究機関京都工芸繊維大学

研究代表者

井沢 真吾  京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (10273517)

研究分担者 杉山 峰崇  大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80379130)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードバニリン / 翻訳抑制 / リグノセルロース / バイオマス / バイオエタノール / アルコール発酵 / 酵母
研究実績の概要

バニリン存在下でもポリソームで優先的に翻訳されるmRNA種の同定
木質・草本系バイオマス由来発酵阻害物質のうちバニリンは最も発酵阻害効果が高く、10 mM前後で翻訳活性を著しく低下させcytoplasmic mRNP granuleの形成を誘導する(Iwaki et al., PLoS One, 2013)。そのため、大部分のmRNAは翻訳されずP-bodyやstress granuleといったcytoplasmic mRNP granuleに隔離されるが、一部のmRNAはバニリン存在下でもポリソームで翻訳されることが確認されている。バニリンストレス下でも優先的に合成される翻訳産物がバニリン耐性獲得において極めて重要な役割を担っていると考えられることから、ストレス下でもポリソームに含まれ翻訳されるmRNAの同定をおこなった。
ポリソーム画分からmRNAを回収し、DNAマイクロアレイによって遺伝子を同定した。同定したそれぞれの遺伝子について、qRT-PCRおよびWestern blot解析を行い、バニリンストレス下でもスムーズに転写・翻訳される遺伝子(VEP遺伝子)を複数同定することに成功した。
さらに、同定した遺伝子のプロモーター領域およびターミネーター領域の遺伝子配列を用いて、任意の遺伝子の発現がバニリンストレス下でも可能になるのか検討を行った。これまでに、VEP1遺伝子のプロモーター領域およびターミネーター領域を用いることで、GFPなどのnon-nativeな遺伝子をバニリンストレス下で発現させることに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

10mMのバニリン存在下で翻訳活性が抑制された状態の出芽酵母細胞から、ポリソーム画分を抽出し、さらにポリソーム画分に含まれるmRNAの回収をおこなった。DNA マイクロアレイによって、非ストレス条件下のポリソーム画分から回収したmRNAとの比較をおこない、バニリン存在下でもポリソームを形成するmRNA種を同定した。これらのmRNAはVEP1-25と命名した。VEP1-3について、各種濃度のバニリンストレス下での転写レベルや翻訳レベルを検討し、高濃度バニリンストレス存在下でも翻訳・発現することを確認した。また、VEP1遺伝子のプロモーター領域およびターミネーター領域を用いることで、GFPやGPX2などのnon-nativeな遺伝子をバニリンストレス下で発現させることに成功した。VEP2およびVEP3遺伝子のプロモーター領域およびターミネーター領域を用いても、同様の結果を得た。また、バニリン同様にバイオマス由来の発酵阻害物質であるフルフラールやヒドロキシメチルフルフラールなどによっても、VEP2やVEP3の発現が抑制されず、優先的に翻訳されていることを見出した。
また、VEP1/2/3の遺伝子破壊株について、バニリン感受性を検討したところ、VEP1欠損株は高濃度のバニリンに対して高い感受性を示すことが確認され、VEP1が高濃度バニリンへの適応において重要な役割を果たすことが示唆された。一方、VEP2の欠損株は比較的低濃度のバニリンストレスに対しても高い感受性を示したことから、バニリンの無毒化や適応において重要な役割を担うと考えられた。

今後の研究の推進方策

同定したVEP1-3遺伝子のプロモーター領域とターミネーター領域を用いて、バニリン存在下でも任意の遺伝子の発現を実現することが可能となった。そこで、VEP1-3の中から発現効率の良いプロモーター領域とターミネーター領域の組み合わせを検討し、バニリンストレス下での遺伝子発現に最適化した発現用ベクターを新たに構築する。なお、非翻訳領域の利用のみで解決できない場合には、翻訳の開始に重要なKozak配列をはじめ開始コドン近傍の塩基配列やOpen reading frame (ORF)内の配列(特に開始コドンのすぐ下流の配列)などが輸送・翻訳効率に影響する可能性を検討し、改良を加える。
また、バニリンストレス下でも優先的に翻訳されるmRNA群は、バニリンストレス応答に特化した翻訳および核外輸送制御機構を共有している可能性が考えられる。そこで、これらのmRNAの非翻訳領域に共通する特徴的な塩基配列モチーフや結合タンパク質が存在するのか検討する。
バニリン耐性獲得において重要だと思われるVEP1-3遺伝子について、多コピーベクターに導入して過剰発現株を構築し、バニリンに対する耐性が改善されるか検討する。 単一遺伝子の過剰発現では、バニリン耐性を効果的に付与できないことも予想されることから、同定した遺伝子の細胞内機能を考慮しつつ、多重で過剰発現させて最も高いバニリン耐性を付与する遺伝子の組み合わせを検討する。バニリン耐性が改善された遺伝子については、実用酵母でも過剰発現株を構築し、バニリン耐性となることを検証する。その後、バニリン含有培地を用いたバイオエタノール製造において、生産効率の飛躍的向上が可能か検証する。

次年度使用額が生じた理由

当初購入予定であった分析機器を他財源で前倒しで入手することができたため差額が生じた。また、キャンペーン商品の購入などによって節約に努めたため、翌年に繰り越すことが可能となった。

次年度使用額の使用計画

研究のさらなる効率的推進をはかるため、高効率試薬類などの購入を予定している。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Plasma membrane proteins Yro2 and Mrh1 are required for acetic acid tolerance in Saccharomyces cerevisiae.2015

    • 著者名/発表者名
      Takabatake A, Kawazoe N, Izawa S.
    • 雑誌名

      Appl. Microbiol. Biotechnol.

      巻: 99 ページ: 2805-2014

    • DOI

      10.1007/s00253-014-6278-2

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Isolation of lactic-acid tolerant Saccharomyces cerevisiae from Cameroonian alcoholic beverage.2014

    • 著者名/発表者名
      R. Kubo, K. Ohta, S. Funakawa, N. Kitabatake, S. Araki, and S. Izawa
    • 雑誌名

      J. Biosci. Bioeng.

      巻: 118 ページ: 657-660

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2014.05.007

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Importance of glucose-6-phosphate dehydrogenase(G6PDH) for vanillin tolerance in Saccharomyces cerevisiae.2014

    • 著者名/発表者名
      T. Nguyen, S. Kitajima, and S. Izawa
    • 雑誌名

      J. Biosci. Bioeng.

      巻: 118 ページ: 263-269

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2014.02.025.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] エタノールおよび発酵関連ストレス下における酵母のmRNA flux2015

    • 著者名/発表者名
      井沢真吾
    • 学会等名
      極限環境生物学会第16回シンポジウム
    • 発表場所
      京都大学益川ホール
    • 年月日
      2015-06-06
    • 招待講演
  • [学会発表] 発酵関連ストレス下で優先的に翻訳される遺伝子の探索2014

    • 著者名/発表者名
      Trinh TM Nguyen・山内雪菜・岩城 理・井沢真吾
    • 学会等名
      酵母遺伝学フォーラム第47回研究報告会
    • 発表場所
      東京大学弥生講堂
    • 年月日
      2014-09-01 – 2014-09-03
  • [図書] 「発酵・醸造食品の最前線」2015

    • 著者名/発表者名
      北本かつひこ 編 井沢真吾.分担執筆
    • 総ページ数
      282
    • 出版者
      シーエムシー出版
  • [図書] Stress Biology of Yeast and Fungi2015

    • 著者名/発表者名
      S. Izawa (ed. Takagi H & Kitagaki H.)
    • 総ページ数
      218
    • 出版者
      Springer

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公開日: 2016-06-01  

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