研究課題/領域番号 |
26292040
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
園元 謙二 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10154717)
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研究分担者 |
神田 大輔 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (80186618)
善藤 威史 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50380556)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ランチビオティック / 翻訳後修飾 / nukacin ISK-1 / lipidⅡ / NMR解析 / 2成分制御システムLiaRS / 相互作用領域 / 抗菌ペプチド |
研究実績の概要 |
nukacin ISK-1(以後ISK-1)とlipid IIとの相互作用の領域について詳細に検討した。 lipid IIと相互作用するISK-1のアミノ酸残基をより簡便に決定するために、Bacillus subtilisの2成分制御システム、LiaRSレポーターアッセイを検討した。先ず、ISK-1のRing A領域のアミノ酸変異体を精製して用いた結果、Ring Aがlipid IIとの特異的な相互作用に関与していた。また、ISK-1の他の領域の変異体についても検討し、N末端の線状領域中のLys1、Lys2、Lys3およびGly5、Ring BとRing Cもlipid IIとの相互作用に関与していた。さらに、これらISK-1変異体の抗菌活性とlipid IIとの相互作用に相関があった。 次に、ISK-1-lipid II複合体構造情報をさらに詳細に得るために、ISK-1に対して界面活性剤n-octyl-β-d-glucoside(βOG)とlipid IIの二段階滴定を行い、NMRを用いてISK-1の1H-15N二次元相関スペクトルの測定を行った。ISK-1へのβOGの添加に伴い、疎水性アミノ酸に富むRing C領域において、各残基の高磁場側への化学シフト変化を観測した。続くlipid IIの添加により、Ring Aの近傍領域とRing C領域の残基に化学シフト変化が認められた。これらの結果から、Ring Cがlipid IIのイソプレノイド鎖と相互作用することを推定した。また、リン酸基を含む界面活性剤ドデシルホスホコリンの添加でも、Ring A近傍領域の化学シフト変化が観測されたことから、この領域がlipid IIのリン酸基と相互作用していることも示唆された。これらの相互作用情報は、前述したLiaRSレポーターアッセイの結果によっても支持された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画書の作成段階で、予想される問題点を明確にしていたことと、数値目標を定め多方面からの検討を柔軟に行ったことが順調に進展する結果となった。また、研究代表者と分担者が互いの専門領域で柔軟に対処したことも大きな要因と言える。
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今後の研究の推進方策 |
1.異常アミノ酸形成酵素NukMの結晶構造解析: 現在までに、NukMの大腸菌での発現・精製に成功しており、in vivo、in vitro両方での異常アミノ酸形成反応を確認している。これまでの機能解析によりNukMの修飾反応にはMg, ATPが必要であること、NukAのN末端のリーダーペプチド配列が認識に必須であることを明らかにしている。全長NukMでの結晶化が進まない場合には、基質などとの複合体を以下のように形成させることで結晶化がうまく行くことがある。基質であるNukA(nukacin ISK-1の前駆体)、その部分構造であるリーダーペプチド、またはATPおよびその非水解アナログとの複合体の結晶化を試みる。また、プロテアーゼ限定分解や遺伝子ディリーションの実験からNukMのドメイン構造を推定し、ドメイン単位での発現と単独および基質との複合体の結晶化を試みる。枯草菌由来のNukMに相同なタンパク質の発現と結晶化も同時に進行し、触媒活性残基や基質結合部位など修飾酵素の詳細を解析する。
2.立体構造情報に基づく機能改変: NukMの基質特異性が高い場合、様々なペプチドに自由自在に異常アミノ酸を導入するという観点からは大きな弊害である。NukMの立体構造やNukAとの複合体の立体構造からNukMの基質結合部位および触媒部位の詳細な構造を得ることができるため、この領域のアミノ酸に変異を導入することで改変を試みる。得られたNukM改変体の立体構造は、ホモロジーモデリングによりin silicoで予測、あるいは神田による解析を行い、基質結合部位周辺の構造と基質認識との関連性を明らかにする。標的ペプチドの種類を増やし、このサイクルを繰り返すことで、ランチビオティック工学の中核を担うマルチな異常アミノ酸形成酵素の創製を行い、得られた結果を取りまとめて、成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
相乗り分析等が生じたため、物品費が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費に使用する。
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