研究課題/領域番号 |
26292046
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
仁木 宏典 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 教授 (70208122)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 二形性 / 分裂酵母 / 菌糸 / ストレス応答 / 温度変化 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
二形性酵母ジャポニカス分裂酵母Schizosaccharomyces japonicusは外的なストレスにより酵母から菌糸へと増殖様式を転換する。菌糸の転換を誘導するストレス応答の分子機構を明らかにする研究の過程で、ジャポニカス分裂酵母が明暗の光刺激や温度の変化に応答して細胞分裂の活性化を起こすことが明らかになった。光刺激や温度の変化への応答機構を明らかにしジャポニカス分裂酵母の外的なストレス応答の全貌を明らかにする。 本年度では、外的なストレス応答に関与する遺伝子を明らにする目的で、当研究室で作成している分裂酵母Schizosaccharomyces属のうちでもジャポニカス分裂酵母に固有の遺伝子の破壊変異株203株の中から光刺激や温度の変化に応答しなくなったもののスクリーニングを行った。その結果、ジャポニカス分裂酵母に固有の遺伝子群の中で光応答しているものは、既報のwcs1, wsc2に加えて、新しく見つかったdrk1遺伝子だけであった。他方、温度応答では、trj1以外には新たな遺伝子変異はみつからなかった。 温度応答では、trj1ファミリーの比較解析を行いよく保存された領域を5ヶ所見出した。また、trj1遺伝子に50箇所の点突然変異の導入を行い、その温度応答の解析から機能ドメインの特定を試みた。また、温度応答の実態を明らかにするためtrj1の遺伝子発現を調べ、その発現が温度変化により上昇することを明らかにした。菌糸の培養温度を30度から35度に上げると、数時間後からtrj1の転写量が増加し始める。その増加は温度刺激の後、約18時間で最大に達し、約3.5倍まで上昇する。その後、18時間かけて元に取るという非常に緩やかな転写量の変化を見せる応答であることがわかった。これはヒートショックと呼ばれる急速な転写量の増加とは対称的な応答である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
菌糸誘導のシグナル経路、細胞周期制御経路の変異の影響について結果がまとまった。また、継続して遺伝解析を続けていた変異体などの研究から菌糸の光応答と温度変化に対して新たな知見が見出された。 1) 光応答に関しては、Wcs1とWsc2の機能ドメインの全貌がほぼ特定でき、これらタンパク質の会合過程が明らかになった。光刺激を受けて、Wcs1とWsc2は多量体化し活性型の転写因子になると考えられる。 2)サイクリン遺伝子の破壊コレクションの作成が完了し、菌糸増殖に必須のサイクリンの特定を試みた。その結果、複数のサイクリンが重複した機能を持つらしく、特定のサイクリンのみが働いているのではなく複数のサイクリンが相補的に機能しているものと考えられる。 3)温度応答では、温度刺激の後20時間以上に渡ってtrj1遺伝子発現が上昇することが明らかになった。 他方、計画していたtrj1の50箇所の遺伝子変異の作成が遅れ、trj1の遺伝子産物の機能ドメインの解析が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
遅れているtrj1遺伝子の50箇所のアミノ酸置換変異の作成を早急に進め、trj1の遺伝子産物の機能ドメインの解析を行う。 温度刺激に関して、温度変化により20時間以上に渡ってtrj1の遺伝子発現が上昇し、この後やはり数時間をかけて元に戻ることが明らかになった。この実験は、一回だけ温度上昇をさせるという反応刺激である。そこで、温度上昇という刺激を与えその12時間の後に、35度から再び30度に培養温度を変えるという温度変化の刺激を与える実験を行う。これにより、trj1の遺伝子の発現上昇がどのような影響を受けるのか調べる。作業仮説としては、温度の低下により、遺伝子発現の抑制が起こり、より早く元の発現レベルに達するものと考えている。以上のように昼夜の日周性の温度変化に近づけた温度変化により、遺伝子発現の振動のパターンを明らかにしたい。これらの知見を、trj1の遺伝的な構造解析と共にまとめ外部発表する。 また、Trj1とWcs1,Wsc2の機能ドメインの解析を完成させるため、これまでの成果から予想される重要機能ドメインに対して体系的なアミノ酸置換変異体をPCR変異導入法を用いて作成する。そして、その変異体の表現形質を調べる。 菌糸誘導のシグナル経路、細胞周期制御経路の変異の影響についても実験成果をまとめており、論文発表に必要な追加実験を予定している。Wcs1とWsc2の機能ドメインのについても、現段階での成果をまとめ論文発表する。Wcs1とWsc2の機能ドメインは、その配列比較では、アカパンカビとは当初異なるドメイン構と思われていたが、機能的には相対するドメインが見つかり、菌類全体で非常に保存されているということが示唆されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画としていた変異体の解析が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
機能ドメインに体系的なアミノ酸置換変異を導入したライブラリーを作成する。そのため、変異導入用のPCRプライマーの設計と合成を行う。これを使い遺伝子変異を導入し、塩基配列のシーケンスにより変異を確認する。
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