研究実績の概要 |
大腸菌rrnオペロン完全欠損株Δ7を宿主とした異種16S rRNAの機能相補株として、大腸菌とは門レベルで異なるAcidobacteriaに帰属される16S rRNAを複数単離した。配列相同性は78-79%程度であった。 Acidobacteria門16S rRNAの中でも最も生育に遅れの見られたNS5株について、継代培養による生育復帰株の獲得を試みた。NS5株を3系統(A, B, C)に分け、対数増殖期に菌体を植え継ぐ方法で37℃、栄養培地にて連続培養を行った。2週間後に各系統から3株ずつを寒天培地上で単離した。これらの株よりゲノムDNAを調製し、新学術領域「ゲノム支援」の支援を受け、全ゲノム解析を行った。 その結果、各系統のいずれの3株も独立した変異株であり、A系統及び B系統の各3株において、同一のリボソームタンパク質をコードする遺伝子内にアミノ酸置換を伴う塩基変異を見出した。A系統、B系統では別々のアミノ酸置換であり、これらの変異が適応進化の原因であることが強く示唆された。大腸菌リボソームの立体構造上の位置を確認したところ、16S rRNAと変異アミノ酸部位との距離が3オングストローム以内であった。C系統においては、A, B系統とは別のリボソームタンパク質中に塩基置換を見出した。これらは3株間で共有されていた。 Acidobacteria由来16S rRNAのNS11については大腸菌16S rRNAとドメインキメラを作成し、生育速度を比較した。その結果、3'マイナードメインを置換したものについて大幅な生育回復が見られた。さらに部位特異的な塩基置換により重要な部位を絞り込んだところ、わずか1塩基対を大腸菌型に変えることで同等の生育復帰が観察された。300塩基以上の異なる16S rRNAでもわずか数塩基の置換で機能回復が見られることは、大半の異なる塩基が機能的に中立であることを示している。
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