研究課題/領域番号 |
26292049
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木村 淳夫 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90186312)
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研究分担者 |
奥山 正幸 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (00344490)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖質酵素 / 糖転移反応 / 構造因子 |
研究実績の概要 |
糖質酵素が示すオリゴ糖の合成反応を支配・向上できる4つの新現象を見出した。すなわち、α-1,3-グルコシド転移酵素、触媒残基の変異酵素、触媒水の供給機構および多糖合成酵素のC末端削除体である。本研究の目的は、これらの現象を解析し、糖転移反応の分子機構を知り、応用研究に結びつけることにある。研究は順調に進行している。 1. α-1,3-グルコシド転移酵素:本酵素のα-1,3-グルコシド結合特異性に関与するアミノ酸を類縁酵素の構造情報から推定し、点変異法を用いて検討を行った。その結果、複数の候補を認めたので詳細な解析を進めている。また、酵素結晶化条件の確立も進行中である。 2. 触媒残基の変異酵素:昨年度に調製したα-グルコシダーゼ(AGと略)の置換体(アミド型アミノ酸への置換および水酸基を有する小サイズ型残基への置換)の受容体特異性を調べた。前者は狭い特異性を示し、受容体基質の種類が少なかった。一方、後者は受容体基質の種類が多く、特異性が広いことが判明した。 産業用AGの触媒残基変異酵素を構築し、本知見の活用を図った。転移能力が低いため、受容体基質の選択検討を行っている。 3. 触媒水の供給機構:本年度は、AGの触媒水の供給孔を構築する疎水性残基に焦点を当て、本アミノ酸の変異で細孔遮断を試みた。作製した変異酵素は、加水分解力の低下と転移能の上昇を示した。昨年に調べた塩基性残基の変異体より大きな転移速度を与えたので、当該置換はより温和な変異であると判断された。 4. 多糖合成酵素のC末端削除体:本酵素のC末端領域の削除体に長鎖オリゴの合成増加と多糖合成の低下が認められたので、本機能を支配する構造因子の決定を目的とした。昨年に得られた候補領域の削除をさらに進め、複数の構造因子が存在する可能性が得られた。複数箇所を対象にした点置換を行うことで構造因子の決定を急いでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年は2年目であるが初年度に引き続き4項目の各課題に掲げた研究が順調に進められた。特に、複数の構造因子が存在する想定外の成果を取得できる可能性を得た(「α-1,3-グルコシド転移酵素」と「多糖合成酵素のC末端削除体」の研究項目が該当)。また「触媒残基の変異酵素」において、導入したアミノ酸が異なる受容体特異性を示す新規な現象を見出した。さらに、酵素分子の重要部位に対する変異導入は機能低下を招くことが一般的であるが、高い転移速度を保持したままで「触媒水の供給機構」を制御できる構造因子の発見は興味深い。これらは当初計画を上回る優れた成果と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に変更はない。すなわち、平成26年度(初年度)において立案した計画に従って研究を進め、4酵素が示すユニークな転移機能の分子機構を解析する。
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