研究実績の概要 |
糖質酵素が示すオリゴ糖の合成反応を支配・向上できる4つの新現象を見出した。すなわち、α-1,3-グルコシド転移酵素、触媒残基の変異酵素、触媒水の供給機構および多糖合成酵素のC末端削除体である。本研究の目的は、これらの現象を解析し、糖転移反応の分子機構を知り、応用研究に結びつけることにある。 1. α-1,3-グルコシド転移酵素:昨年度に見出された複数候補(芳香族残基と酸性残基)を解析した。両者の置換は、α-1,3-グルコシド基質への親和性を親酵素より高めたが、前者の転移能は低下した。一方、後者は親酵素より高い転移活性を与えたので、当該アミノ酸が構造因子と推定した。酵素結晶は得られなかったが、類縁酵素の構造情報から両残基は糖転移の受容体サイトに存在した。 2. 触媒残基の変異酵素:昨年度に本手法を産業用の糖質酵素に活用し、触媒残基の変異体を構築した。弱い転移力を示したので、受容体基質を検討した。特定の受容体に対し転移活性が認められたが、充分な転移量が得られなかった。この理由は、置換した触媒残基が糖転移の受容体サイトを形成するためと考えられた。 3. 触媒水の供給機構:触媒水の供給孔を構築する疎水性残基(第3の候補である芳香族アミノ酸)の変異で細孔遮断を試みた。作製した置換酵素を解析すると、昨年度に行った疎水性残基(第2の候補)の変異とほぼ同等の加水分解力低下と転移能上昇を示し、かつ第1候補の塩基性残基(初年度結果)より高い転移活性を与えた。変異酵素の結晶は作製できたが、構造解析に不向きであった。しかし、親酵素の構造から上述の3アミノ酸は細孔内に存在する。 4. 多糖合成酵素のC末端削除体:ようやく得られた候補領域に残基置換を導入し、2アミノ酸からなる構造因子の存在を確認できた。さらに、末端部分にさらに最低1箇所以上の構造因子の存在を示唆する結果を得た。
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