研究課題
遺伝子発現の制御段階として、転写や翻訳がよく知られている。これらに加え、高等真核細胞では、mRNAの核から細胞質への輸送(核外輸送)も重要であることを発見した。mRNAの核外輸送は、mRNA輸送体によって担われている。mRNA輸送体としてヒトTREX複合体とAREX複合体を見いだし、これらの生理機能の違いを明らかにした。また核外輸送を担うmRNA輸送受容体を用いて、動物細胞におけるタンパク質生産技術へと応用する研究を行ってきた。本研究は、TREX複合体とAREX複合体の2つに多様化したヒトmRNA輸送体が形成するmRNA核外輸送経路について、機能解析と構造解析とインフォマティクスを駆使して包括的に解析し、ヒトにおけるmRNA輸送経路の全貌を明らかにする。さらにアプライドmRNAバイオテクノロジーとして、mRNA核外輸送を効率化する第2世代の標的mRNA専用輸送系を創成し、革新的タンパク質生産技術として産業化へ結びつける研究を展開することを目的とした。mRNA輸送体について、様々な変異を導入しAREX型からTREX型に複合体形成を変化させるURH49を見いだした。さらに、この変異によりUAP56の機能をURH49変異体が相補できることを機能アッセイにより証明した。次いで、結晶構造を比較するためにURH49ならびにURH49変異体を大腸菌で大量生産することに成功した。加えて、これらの結晶作製を行い、URH49変異体の結晶の取得に成功した。一方、URH49野生型についても結晶は取得しているので、既に構造の決まっているUAP56の構造と比較できるよう計画している。最後にUAP56ならびにURH49の結合RNA配列の同定を試みている。これらと特異的に結合するRNAを取得できることを予備的に確認している。
2: おおむね順調に進展している
・複合体形成を変化させる変異を明らかにした。・URH49変異体の結晶の作製に成功した。・UAP56ならびにURH49と特異的に結合するRNAの取得に成功した。以上の成果から、計画は順調に進んでいると判断している。
URH49ならびにURH49変異体の結晶構造を決定し、その構造を既知のUAP56と比較する。これによりUAP56とURH49がそれぞれ異なる複合体を形成する分子基盤を明らかにする。またUAP56ならびにURH49が結合するRNA配列をPER-Clipと次世代シークエンサーにより決定し、そのコンセンサス配列についてインフォマティクスを用いて明らかにする。
当初予定していた成果が順調にでたため、予定した実験条件等の検討の必要がなくなった。このために、それらに使用するために予定していた費用を使用する必要がなくなった。
PER-Cilpならびに次世代シークエンサーによる結合RNA配列の決定において、より詳細な配列決定のための費用に使用する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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http://www.bunshioutou.lif.kyoto-u.ac.jp