研究課題/領域番号 |
26292056
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
桑原 重文 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30170145)
|
研究分担者 |
清田 洋正 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (30234397)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | nigricanoside / amphidinolide / 細胞毒性 / 癌 / オキシリピン / マクロライド |
研究実績の概要 |
amphidinolide Nの全合成に向けて,2014年度は,ブロックAおよびブロックCの合成を検討した。ブロックA(C17-C29ユニット)については,まず,4-ノネン酸メチルの不斉ジヒドロキシル化により調製した光学活性中間体から,メシルオキシラクトンのワンポットでのエポキシエステルへの変換等を経て,エポキシアルデヒド中間体を得た。そのルイス酸触媒下での不斉ビニロガス向山アルドール反応によるアルドール付加体(ブロックAに相当)への変換は成功しなかったが,beta-ケトブタン酸のアセトナイド保護体を用いる塩基性条件下の反応では望む付加反応が進行することを見出し,現在,その不斉反応化によるブロックAの立体選択的構築を進めている。ブロックC(C1-C13ユニット)については,小林不斉アルドール反応を用いるC7-C13ユニットの短段階合成を検討した結果,ジチオアセタールを保護基とした場合には,反応がうまく進行することが分かった。現在,反応条件の最適化を行っている。 nigricanoside Aのジメチルエステル体については,2015年になって全合成と立体化学の決定が報告され,合成品には癌細胞増殖抑制活性が無いと述べられているが,天然物本体であるジカルボン酸の活性試験は実施されておらず,合成法にも改良の余地が多々あるため,研究を継続している。現在までに,nigricanoside Aを構成する2つのポリヒドロキシ不飽和脂肪酸鎖(alpha-鎖,beta-鎖)とガラクトシルグリセロール部位(GG部位)の内,alpha-鎖の合成を完了するとともに,GG部位の合成も完成した。また,GG部位とbeta-鎖右側部分との連結にも成功しており,alpha-鎖とbeta-鎖左側部位の連結体の調製および,そのGG/beta-右側ブロックとの結合形成を残すのみとなっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
nigricanoside Aの全合成については,部分構造の合成完了にとどまっている。また,各部分を立体選択的に得る点についても,選択性をさらに向上させるための最適化が必要である。 amphidinolide Nの全合成については,当初目指していた短工程での各ブロックの構築が保護基の不安定性のためにうまく進行しないことが判明した。保護基の選択により望む反応は進行したが,立体選択性の点では改善の余地を残した。 albinoside IIIの合成については,糖原料の調製に時間を要しており,鍵反応であるRCMの検討には至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
amphidinolide NのAブロックおよびCブロックの合成については,当初予定していた短工程でのブロック合成はうまく進行しなかったものの,Aブロックについては,beta-ケトブタン酸のアセトナイド保護体を用いる塩基性条件下の反応では望む付加反応が進行することを見出しているので,その不斉反応化を実現して,早期の完成を目指す。Cブロックについては小林不斉アルドール反応による短工程合成法は複雑な混合物を与える結果となった。しかしながら,保護基を選択することで望む反応が進行することを見出している。また,工程数は少し長くなるもののEvans法を経由すれば目的とするCブロックの前駆体が得られているので,今後は,小林不斉アルドール反応の最適化と平行して,Evans法によるCブロックの構築を目指す。残るBブロックは合成法が既知のキラル合成ブロックであるため,AブロックとCブロックが完成次第,Bブロックを用いて両者を連結し,早期の完成を目指す。 nigricanoside Aについては,全合成に必要な合成ブロックが完成ないしは完成間近であるので,各ブロックの連結を行って全骨格を有する中間体を調製し,保護基の除去を行って天然物そのものであるジカルボン酸の初の合成を達成し,生物活性試験に供したい。 albinoside IIIについては,原料の調製段階で技術的問題があり進行が遅れているが,早急に調製を進めて,鍵反応(RCM反応)を試みる。
|