研究実績の概要 |
(1)テトロドトキシン(TTX)の生合成研究: TTXを有するイモリより、C10-C5が直接結合したTTX類縁体である4,9-anhydro-5-deoxy-10-hemikecalTTXと4,9-anhydro-8-epi-10-hemiketal-5,6,11-trideoxyTTXを発見し、単離、構造決定した。これらの化合物の構造は、これまでの予測TTX生合成経路に反していた。特に、前者はBaeyer-Villiger monooxygenaseで1段階で4,9-anhydroTTXに変換できると考えられた。また、後者は、C10-C5結合が開裂することにより、4,9-anhydro-8-epi-5,6,11-trideoxyTTXへ変換されると考えられた。また、これらのC10-C5結合を有するTTX類縁体の構造から、モノテルペン由来であると推定された。今のところこれらの化合物は、海洋生物からは検出されていないので、海洋生物のTTXはイモリとは別の生合成経路で合成されるのか、あるいは中間体が蓄積しない可能性が考えられ、関連物の探索を今後継続する。 (2)サキシトキシン(STX)の生合成研究: Neilanらが有毒藍藻の遺伝子よりSTXの生合成経路を推定したが、化学的に中間体の構造を十分に証明していなかった。我々はこれまで、STXの初期生合成中間体Int-A’,Int-C2’を化学合成して、HPLC-HR-MSを用いて有毒藍藻および渦鞭毛藻類に存在することを初めて明らかにした。また、本研究ではさらに、Int-C2’を化学合成した時にPd/C存在下でoxidative cyclizationが進行してSTXに類似した三環性のbisguanidine化合物(cyclic C’)が生成することを明らかにした。また、この化合物が有毒藍藻および有毒渦鞭毛藻類にも存在することをHPLC-HR-MS/MSで証明した。このことから、本環化反応を触媒する酵素がこれらの生物に存在する可能性が示めされた。
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