シクロオクタチン生合成のためのジテルペン環化酵素CotB2に関しては、基質アナログであるGGSPPとの共結晶の構造を解くことに成功し、基質GGPPの認識に関与するアミノ酸残基を特定した。この構造は、先に提唱したCotB2の詳細な反応機構を良く支持するものであった。 2分子のジメチルアリル二リン酸(DMAPP)からシクロラバンデュリル二リン酸(CLPP)を生成するテルペン合成酵素CLDSの反応メカニズムの解明については、メチル基の水素原子をすべて重水素で置換したラベル化DMAPPを用いて、そのプロダクトの標識パターンを解析した。その結果、2分子のラベル化DMAPPに含まれる計12個の重水素が全てCLPPに残ることが判明した。この結果から、分子内プロトン転位を伴う反応機構であることが判明した。CLDSとDMAPPを含んだ結晶構造の解明に成功し、反応に関与すると考えられるアミノ酸残基を同定した。さらに、変異酵素の解析から、CLDSの8番目のプロリン残基が、2つのDMAPPの縮合反応に続く環化反応に重要な役割を果たしていることを明らかにした。 カルキノスタチンの生合成研究に関しては、CarPTaseの破壊株を作製し、その破壊株が蓄積する生合成中間体を同定することに成功した。その構造は、カルキノスタチンの構造からプレニル基が欠失した構造であった。そこで、大腸菌で調製した組換えCarPTaseとこの生合成中間体をDMAPP存在下で反応させたところ、確かにカルキノスタチンが生成することが判明し、CarPTaseの生理的基質を同定することができた。 Trichoderma atorovirideの生産するテルペン化合物の生合成研究に関しては、TaTC1は単環式ジテルペン化合物Cembrene Aを主生産物とするジテルペン合成酵素であり、TaTC3はモノテルペン化合物cis-Piperitolを主生産物とするモノテルペン合成酵素であることを明らかにした。
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