研究課題/領域番号 |
26292059
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
渡辺 修治 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (90230979)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 花芽誘導 / レムナ / 合成 / 構造要求性 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
乾燥ストレス応答性内生花芽誘導物質として研究代表者(渡辺)らが花芽誘導(花成)研究モデル植物レムナから単離・構造決定した低分子化合物LDS1をヒントに以下の研究を推進している。 ・LDS1の9位,13位炭素のキラリティーをMTPAエステルを用いてNMRの詳細な解析に基づき,主要なジアステレオマーを(9R, 13R)と決定した. ・ジアステレオマーの花芽誘導活性:いずれのジアステレオマーとも全く同様な花芽誘導活性を示し,立体配置は花芽誘導活性とは無関係であるとの示唆を得た. ・LDS1の全合成と花芽誘導における構造要求性解析:前年度中に,逆合成解析結果に基づいた全合成を進めた.最終段階での脱水反応のため,LDS1の全合成は未達成である.一方,LDS1の水酸基欠損体および,それらの炭素鎖短縮体3種の合成を達成した.合成したLDS1アナログの花芽誘導活性を検討したところ水酸基欠損体では花芽誘導活性が消失した.LDS1の脂溶性尺度から大きく離れているアナログでは活性が失われるとの示唆が得られた. ・花成制御遺伝子発現解析によるストレス応答性花芽誘導におけるLDS1の役割の解明:レムナにおいてLDS1の投与の有無で花芽誘導遺伝子ホモログの発現解析を試みている.投与直後,5日目,花芽誘導活性が観察できる10日目の試料を調製し,遺伝子を抽出後,次世代シークエンサーによって解析を進めている.解析結果はまだ得られていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
LDS1の水酸基の欠損体の合成は達成したものの,最終段階での水酸基の脱離により,全合成には至っていない.すなわちLDS1の全合成においては前年度の計画にしたがって概ね順調に進展しているといえる. 一方,4種の,炭素鎖短縮体,水酸基欠損体の創出に成功した.本合成の達成により,構造要求性の解析においては当初の計画以上に進展した. LDS1の花芽誘導活性と花芽誘導遺伝子発現との関連をレムナにおいて検討すべく,当初は3種程度の候補遺伝子を取り上げクローニングする予定であったが,LDS1投与後の花芽誘導関連遺伝子の発現解析を次世代シークエンサーで解析している.試料の調製,純度の高い遺伝子の抽出に成功し,外部機関に遺伝子解析を依頼している段階で有り,概ね順調に推移している. 代謝抵抗性アナログ,立体配置固定型アナログの分子設計:in silico解析により複数の候補化合物に絞り,その合成法を提案した.また,当初の予定に加え,水酸基と末端カルボキシル基とのラクトン誘導体の合成にも着手するなど,当初計画通り,概ね順調に推移している.
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今後の研究の推進方策 |
合成研究,遺伝子発現解析研究とも次年度の計画に従って進めることにより,LDS1の全合成の達成,複数のアナログの合成の目途が立った.分子の脂溶性の尺度に基づいた分子設計の目途も立ったことから本年度内に一部の構造要求性が明確になる. 代謝抵抗性アナログについては,LDS1および,高活性アナログを用いて,花芽誘導期間内における花芽誘導分子の残存量,および,代謝物の検出をLC-MSMS, LC-MSによって分析検討する.このことにより,代謝経路とその速度を見積もることができる.同時に,代謝物の構造を推定することにより,不活性化経路,活性化経路の有無も推定可能となる. 次世代シークエンサーによる花芽誘導関連遺伝子の発現解析結果に基づき,候補遺伝子のRTPCRによる定量的遺伝子解析も試みることで,構造と活性の相関を花芽誘導活性と遺伝子発現解析との両面から検討する. 合成にあたっては連携研究者間瀬,鳴海,遺伝子解析,代謝解析にあたっては連携研究者大西との打ち合わせを密に行い,さらに,研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
外部委託を予定していた遺伝子発現解析,代謝物解析が,植物試料の調製がやや遅れたため年度内の契約,決算が終了しなかった.すでに,植物試料は外部委託機関に送付し,解析結果を待っている段階である.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に上記経費を計上するとともに,当初から予定していた合成用試薬,ガラス器具,機器使用料,論文校閲経費,旅費(学会参加等)等を計上した.
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