研究課題
本研究課題は、レムナ起源の乾燥ストレス応答性内生花芽誘導物質である低分子化合物LDS1の構造要求性解析と、代謝分解抵抗性、立体配置固定型分子の創製、ストレス応答性花芽誘導におけるLDS1の役割の解明研究を通し、新たな分子機構を有する天然物をモデルとした「花芽誘導分子」の創製、花芽誘導分子機構の解明を目的としている。LDS1は5種類の官能基、炭素直鎖の長さ及び脂溶性が花芽誘導活性に関与していると考え、LDS1における構造要求性を解明するために、13位水酸基、11位二重結合、11位、15位の二重結合の欠損体、10位カルボニル還元体、炭素鎖短縮体、および、1位カルボン酸メチルエステル等の構造改変体の合成に着手した。合成が完了している13位水酸基欠損体の、1位側の炭素鎖を短縮することで脂溶性をLDS1に近似した化合物を合成し、その花芽誘導活性を精査したところ、いずれも花芽誘導活性を示さなかった。また、13位水酸基欠損体の10位カルボニル基を還元したジオール体においても花芽誘導活性を示さないことが明らかとなった。反応混合物を直接、花芽誘導試験に供し、生体内で安定かつ代謝抵抗性を有すると期待される花芽誘導化合物の探索にも着手している。同時にレムナを次世代シークエンサーで分析し、LDS1による遺伝子発現解析を試みている。
2: おおむね順調に進展している
構造要求性研究および全合成:13位水酸基、11位二重結合、11位、15位の二重結合の欠損体、10位カルボニル還元体、炭素鎖短縮体、および、1位カルボン酸メチルエステル等の構造改変体の合成は完了し、逐次花芽誘導活性試験に供している。LDS1の脂溶性尺度を指標とし、脂溶性尺度と花芽誘導活性との関係を検証した。その結果、LDS1の脂溶性尺度と同一化合物でも花芽誘導活性を有しないことを明らかにできた。すなわち、9-13位までの官能基の並びが必須であることが強く示唆され、構造要求性、構造活性相関研究に重要な知見を与えるなど、期待以上の成果が得られている。現在までにLDS1の他に花芽誘導活性を有する化合物は見出されていない。全合成は進捗に遅れが見られた結果、東北大学の研究者(桑原ら)によって達成された。水酸基の保護脱保護において優れた方法を採用しており、本研究課題でも同様な保護基を利用することとした。代謝抵抗性化合物の創製:個々の化合物の活性と構造の相関を検討する旧来の手法に加え、目的化合物の位置異性体等が含まれる反応混合物からの花芽誘導化合物の探索に着手し、各化合物の精製・単離・構造解析を試みている。まだ、代謝抵抗性花芽誘導分子の創製には至っていないが、新しい研究手法を採用するなど研究のブレークスルーが期待される。分子機構の解明:レムナの次世代シークエンサーデータを解析している。発現強度が高い遺伝子はストレス関連遺伝子であった。より精緻な解析手法を駆使して研究を継続している。
構造要求性研究および全合成:9-13位の官能基を有するC18カルボン酸と炭素鎖短縮体、ラクトン体の合成を推進する。上記化合物の合成時に脱保護時の異性化を防ぐ目的で水酸基保護基の種類、脱保護条件を工夫する。代謝抵抗性化合物の創製:これまでに得られた反応混合物を花芽誘導試験に供し、生理活性天然物化学的手法で花芽誘導分子を探索し、精製・単離・構造決定する。成長阻害等の有無も確認する。分子機構の解明:十分量のLDS1を合成次第、花芽誘導時、非誘導時のレムナにおける遺伝子発現の網羅的解析を進める。学術誌・学会発表:構造要求性データを基に年度内に学術誌に投稿するとともに、学会等で発表する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (9件) 図書 (1件)
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