研究課題/領域番号 |
26292062
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
園山 慶 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90241364)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 炎症 / エキソソーム / 腸上皮細胞 / 脂肪細胞 / プレバイオティクス / プロバイオティクス |
研究実績の概要 |
本研究では、「プレバイオティクスのアレルギー炎症抑制作用およびプロバイオティクスの脂肪組織炎症抑制作用が発揮される際の、腸管から各種組織への情報伝達をエキソソームが担っている」という仮説を、以下のように検証した。 Ⅰ. プレバイオティクス摂取マウスの血清エキソソームの抗炎症解析:マウスの血清から分離したエキソソームをマウスマクロファージ細胞株RAW264に添加したときに生じる炎症性サイトカイン産生をフラクトオリゴ糖摂取が抑制することを示した。また、ラットマクロファージ細胞株NR8383をLPS添加およびIL-4 + IL-13添加によりそれぞれM1マクロファージおよびM2マクロファージに分化させたとき、ラット血清エキソソームの添加がM2分化を促進すること、抗生剤投与による腸内細菌叢の撹乱がM1およびM2分化を抑制することを観察した。 Ⅱ. プロバイオティクス摂取マウスの血清エキソソームの抗炎症作用および脂肪蓄積抑制作用解析:Lactobacillus rhamnosus GG(LGG)株を投与したマウスの血清エキソソームがRAW264細胞の炎症性サイトカイン産生を抑制することを示した。また、腸上皮細胞株Caco-2とSGBS脂肪細胞の共培養系においてLGG死菌体の添加がSGBS細胞の脂肪蓄積を抑制した。 Ⅲ. 血清エキソソームの組成変化の網羅的解析:ラットの血清エキソソームに含まれるタンパクを二次元電気泳動で分析し、抗生剤投与がタンパク組成を変化させることを示すとともに、マイクロアレイ解析によりエキソソーム中のmiRNA組成が抗生剤投与およびフラクトオリゴ糖投与により変化することを示し、腸内細菌が血清エキソソームのタンパクおよびmiRNA構成に影響することを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で設定した仮説(プレバイオティクスのアレルギー炎症抑制作用およびプロバイオティクスの脂肪組織炎症抑制作用が発揮される際の、腸管から各種組織への情報伝達をエキソソームが担っている)に関して、動物実験および培養細胞実験を用いて、Ⅰ. プレバイオティクス摂取マウスの血清エキソソームの抗炎症解析、Ⅱ. プロバイオティクス摂取マウスの血清エキソソームの抗炎症作用および脂肪蓄積抑制作用解析、およびⅢ. 血清エキソソームの組成変化の網羅的解析を実施し、おおむね仮説を支持する結果を得てきている。しかしながら、当初の実施計画にありながら、未実施の項目(血清エキソソームが肥満細胞の脱顆粒におよぼす影響の解析、プロバイオティクス投与が血清エキソソームのタンパクおよびmiRNAの組成におよぼす影響の解析)も存在する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり、以下のように進める。 Ⅰ. プレバイオティクス摂取マウスの血清エキソソームの抗炎症作用解析:肥満細胞の脱顆粒におよぼす影響を解析するとともに、エキソソームがマクロファージ、肥満細胞および脂肪細胞等の標的細胞に取り込まれることを証明する。 Ⅱ. プロバイオティクス摂取マウスの血清エキソソームの抗炎症作用および脂肪蓄積抑制作用解析:血清エキソソームが脂肪蓄積におよぼす影響を解析する。 Ⅲ. 血清エキソソームの組成変化の網羅的解析:プロバイオティクス投与マウスの血清エキソソームの解析を行う。 Ⅳ. 血清エキソソームの由来細胞の探索:腸上皮細胞に着目し、マウス腸陰窩からオルガノイドを作成し、放出されるエキソソームの組成等を解析する。 他に、腸上皮細胞で産生される急性期タンパクが肥満および脂肪組織炎症に関する腸上皮ー脂肪組織連関に関わるという知見を得たので、当初の計画であるエキソソームの解析に加えてこのことについても解析を進める。
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