本研究では、「プレバイオティクスのアレルギー炎症抑制作用およびプロバイオティクスの脂肪組織炎症抑制作用が発揮される際の、腸管から各種組織への情報伝達をエキソソームが担っている」という仮説を、以下のように検証した。 I. マウスの血清エキソソームが培養マクロファージおよび脂肪細胞に取り込まれるか否かを確かめた。すなわち、マウスの血清からエキソソームを分離し、蛍光色素PKH67により標識し、マウスの腹腔滲出細胞、マウスマクロファージ株RAW264.7、および脂肪細胞に分化させたマウス3T3-L1細胞の培地に添加して24時間培養した後、蛍光顕微鏡で観察した結果、それぞれの細胞にエキソソームが取り込まれることを確認した。 II. ラット肥満細胞株RBL-2H3においてモデル抗原および抗体の添加により脱顆粒を惹起するモデルにおいて、プロバイオティクス摂取ラットの血清エキソソームの添加は脱顆粒のレベルを変化させず、エキソソームはアレルギーにおける肥満細胞脱顆粒に関与しないことが示唆された。 III. 血清エキソソームの由来細胞として腸上皮細胞を想定し、エキソソームのカーゴであるmiRNAのプロファイルを解析した。すなわち、マウスの腸粘膜より分離した陰窩および絨毛画分ならびにマウスの腸粘膜陰窩から培養したオルガノイドからRNAを分離し、マイクロアレイおよびRT-qPCRによりmiRNAプロファイルを明らかにするとともに、in silico解析およびRT-qPCRによりmiRNAの標的mRNAの推定と発現解析を実施した。その結果、腸粘膜上皮細胞の陰窩-絨毛軸に沿った細胞更新に関与する遺伝子のいくつかはmiRNAによるエピジェネティック制御を受ける可能性が示唆された。
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