研究課題/領域番号 |
26292065
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
八村 敏志 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (40238019)
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研究分担者 |
高橋 宜聖 国立感染症研究所, 免疫部, 室長 (60311403)
細野 朗 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (70328706)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 食品 / 食品機能 / 食品免疫 / 腸管免疫 |
研究実績の概要 |
経口免疫寛容・食物アレルギーにおける新規細胞間相互作用の解析: マウス腸間膜リンパ節樹状細胞の制御性T細胞誘導能について、CD11b-CD103+PD-L1+サブセットが、CD8αを中程度発現していることが示され、他のサブセットと比較して制御性T細胞誘導能が高いことを示すさらなる証拠が得られた。また、腸内細菌環境を修飾する難消化性糖類の経口投与によって、パイエル板細胞中の制御性T細胞(CD4+Foxp3+)細胞の割合が増加する傾向が確認された。一方経口免疫寛容状態においては、CD62Lhigh/intCD44int CD4+T細胞、CD62LlowCD44high CD4+T細胞の2種類のT細胞群が誘導されることをこれまでに明らかにしている。これらの細胞について発現遺伝子のDNAマイクロアレイ解析を行ったところ、CD62LlowCD44high CD4+T細胞のケモカインレセプターの発現が高いことが示され、この細胞群が各組織に移動して免疫抑制活性を発揮することが示唆された。また、DNAマイクロアレイ解析により、経口免疫寛容状態CD4+T細胞において、濾胞ヘルパーT細胞関連遺伝子が上昇することが確認された。さらに経口免疫寛容状態の腸管免疫組織において濾胞ヘルパーT細胞の表現型 (CXCR5+PD-1+)を有するCD4+T細胞が誘導されることが観察されたため、その機能解析を開始した。
腸管IgA抗体産生における新規細胞間相互作用の解析: マウス小腸パイエル板由来樹状細胞、T細胞、B細胞の共培養系において、微生物由来刺激により、濾胞ヘルパーT細胞の表現型を示す細胞の誘導が促進されることを見出した。また、盲腸リンパ節、結腸リンパ節に、濾胞ヘルパーT細胞、自然リンパ球(ILC)の表現型を有する細胞が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制御性T細胞誘導に関わる細胞間相互作用について、腸間膜リンパ節樹状細胞の役割について新たな知見を得ることができた。また、経口免疫寛容状態における濾胞ヘルパーT細胞についても新規細胞間相互作用の解明に向けて手がかりを得た。 腸管IgA抗体産生における細胞間相互作用についても、濾胞ヘルパーT細胞とB細胞の細胞間相互作用を解析する共培養系が構築され、濾胞ヘルパーT細胞の誘導における微生物刺激の役割について知見が得られた。また、大腸における濾胞ヘルパーT細胞、自然リンパ球による細胞間相互作用の解析に向けた結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
経口免疫寛容・食物アレルギーにおける細胞間相互作用の解析については、樹状細胞-T細胞の相互作用に効果を示す食品因子を検索する。また、経口免疫寛容状態の濾胞T細胞とB細胞の相互作用を解析し、同様に食品因子の検索を行う。 腸管IgA抗体産生における細胞間相互作用については、CD3-IL-2R+細胞を含む自然リンパ球、濾胞ヘルパーT細胞とB細胞の相互作用に効果を示す食品、腸内共生菌刺激を明らかにし、in vivoの実験につなぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
経口免疫寛容における新規細胞間相互作用の解析において、樹状細胞、濾胞ヘルパーT細胞について進展が認められ、次年度に予定していた試薬、器具の購入のため、前倒し請求を行った。一方で、腸管IgA抗体産生における、B細胞、大腸ILCの解析が効率よく進み、試薬購入の費用が当初予定を下回り、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
腸管免疫細胞間の相互作用におけるB細胞および腸内共生菌の役割の解析のため、動物、試薬購入に使用する。
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