研究課題/領域番号 |
26292075
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小池 孝良 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10270919)
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研究分担者 |
佐藤 冬樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (20187230)
高木 健太郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (20322844)
渡辺 誠 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50612256)
渡部 敏裕 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60360939)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 開放系オゾン付加 / 火山灰土壌 / 蛇紋岩土壌 / 褐色森林土 / 感受性 / 耐性 / グイマツ雑種F1 / 老化促進 |
研究実績の概要 |
初年度、開放系オゾン付加施設を既存施設を基礎に改修工事をした。苫小牧と天塩研究林からトラックで火山灰土壌と蛇紋岩土壌を運搬して、6つの開放系オゾン付加リング施設を作製した。そこへ、グイマツ雑種F1とオゾン感受性樹種のブナ、耐性のあるシラカンバと中庸のミズナラを植え込んだ。オゾン付加はから7月実施することが出来た。非破壊での成長解析を行い、イングロース法による根の観察の準備と葉のサンプリングを定期的に実施し、成長阻害を樹木栄養生理的に評価する基礎を達成した。すなわち、衰退の指標として「成長減退の兆候はマグネシウムなどの欠乏、土壌pHに関連してアルミニウムとマンガン量から診断でき、リンが不足することで共生菌類の活動低下による成長抑制が確認できる。」ことを仮説とした。これらの仮説を検証するために従来の関連論文を約400編あつめ、それらを解析して総説を作製した。取り分け、オゾンによる可視被害を軽減するとされるエチレンジウレア(EDU)に関する内容を本邦で初めて紹介できた。 オゾンは葉の老化を促進するが、このために、落葉前に回収出来る栄養塩類にも差が生じる可能性がある。コレを検証するために8月後半に土壌ごとにオゾン付加の有無によってブナ、シラカンバ、ミズナラの葉を採取し、落葉時期の10月末から十分に老化した葉を回収し、プラズマ発光装置を利用して、リン、カリウム、マグネシウム、マンガン、カルシウムを分析し、その挙動を調べた。しかし、チッソとタンソの挙動は、NC分析器が次々にこわれたため、未着手である。樹種、土壌によって応答が大きく異なった。リン、カリウム、マグネシウムは落葉前に回収されていたが、他は落葉になって土壌へ供給された。この点を現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まったく予期しなかった農学研究院と北方生物圏フィールド科学センターの3台の窒素分析器が壊れ、さらに植物栄養学研究室のプラズマ発光分析器が壊れたが、予算が工面できず修理出来なかった。このため、チッソとタンソの分析が未着手である。しかし、この間にオゾン影響緩和に関する文献調査を進めることが出来た。一方、小池孝良が土壌移設工事に関する作業を行ったさいに脱水症状を引き起こし入院を余儀なくされ、予定していた植物材料に関しては、施設周辺に植え替え用の苗木を用意しておき、枯死固体を補完することが不十分であった。しかし、遅霜、夏の予期せぬ高温・乾燥の被害と病虫害の発生、積雪下での苗木の損傷、そして施設に関しては台風の影響が考えられる。前者は植え付け時期を5月末に行って低温害を回避し、材料が小さいので適宜灌水を行ことで枯死を防ぐことが出来た。しかし、越冬対策(雪囲い)を行ったにかかわらず数個体が折れた。これは、保管した別個体で保管できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度のモニタリング調査を継続する。すなわち植栽樹種に対するオゾン付加と窒素付加処理を継続し、定期的な生理機能の評価を行う。さらに相対成長関係を利用した現存量推定を行い、成長解析を行う。定期調査でのサンプリングで得た葉のプラズマ発光分析による養分分析を行い、成長との関係を調べる。オゾンによってカラマツ類では一般的な外生菌根菌の感染が低下し、カラマツにのみに感染できるスペシャリスト種のハナイグチ類(Suillus sp.)が生存していたことが解った。このような根系の応答に関する研究事例は極めて限られているため、感染率と根端数には特に注目し、葉の化学分析(=養分)との関連を調べ、さらなる解析を進めたい。 また、H27年度は、特に、光合成機能と窒素利用特性、特に、光合成関連での分配率に注目して解析を行う。一方、ハンノキハムシの活動が顕著なので、オゾン付加と虫害の影響を調べる予定である。幼虫からの種の同定は非常に難しいので、食害痕からギルド構造に注目して虫害センサスを行う。さらに、主要な養分の調査を行い、光合成機能との関係や樹種毎の養分回収機能に迫る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議での発表を予定したが、参加のための登録料が2015年1月に閉めきられ、発表が2015年6月のように年度をまたがったため、その旅費を確保するために予算を繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
2名の参加を予定している。開催はフランス国NICEであり、5月30日-6月8日の出張を行う。学会での発表内容は、事前審査の結果、2件とも採択された。 1)E Agathokleous+, E Paoletti W J. Manning, C J. Saitanis, F Satoh and T Koike: Growth responses of a willow to free-air-O3 fumigation and EDU: A preliminary report.IUFRO, NICE, 2) T Sakikawa, M Nakamura, M Watanabe, S Kanie, F Satoh and T Koike* : Plant defense and photosynthesis of Japanese white birch saplings grown under a free-air O3 fumigation system
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