研究課題/領域番号 |
26292077
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
堀田 紀文 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00323478)
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研究分担者 |
山川 陽祐 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20611601)
土屋 智 静岡大学, 農学部, 教授 (60197720)
執印 康裕 宇都宮大学, 農学部, 教授 (60221305)
早川 裕弌 東京大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (70549443)
今泉 文寿 静岡大学, 農学部, 准教授 (80378918)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 土砂流出 / 土石流 / 崩壊 / 土砂災害対策 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き大谷崩で測量と観測を実施した.従来までの地上レーザー測量に加えて,UAVによる測量を実施することで,高頻度で地形データの取得が可能になり,土石流と地形条件の相互作用を詳細に検討することが可能となった.結果として,土石流の発生・非発生を判定するための最適な地形解像度に関する情報が得られた.すなわち,土石流の流下形態を左右する河床勾配に関しては概ね5m程度の解像度で現象と対応しており,これは基岩のステッププールの構造を反映したものであることが示唆された.一方で,崖錐については解像度0.5~1mで勾配の標準偏差が収束し,材料特性(粒径)のスケールと対応することが明らかになった. 以上を踏まえて流域全体を対象とした斜面安定解析を行ったところ,安定・不安定,および飽和・不飽和の4領域が区分でき,それらの領域に属する地点が土石流の発生によって時系列で変化していることが明瞭に示された.安定・不安定領域の変化について感度分析を実施したところ,地下水深の変化ではなく,局所的な勾配によって変化が生じることが示された.このことは,土砂生産・流動モデルに組み込む水文過程は単純な飽和浸透モデルで十分であることを意味する.流域全体の土砂動態を記述するモデルのうち,上流部における崩壊~土石流に関するモデルの構築は概ね終了した. 井川演習林では,昨年度から引き続き土砂生産・移動痕跡の調査と,水文・水質調査を実施した.結果として,流域内の湧水点の滞留時間にばらつきが見られることが明らかになり,流域における大規模崩壊を通した土砂生産量の空間的な分布との対応が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
崩壊・土石流と地形条件,水文過程の関係について,詳細な現地観測に基づいて当初の予想を上回る成果が得られた.流域土砂動態のモデル化も順調に進んでいる.一方で下流部でのモデル検証に用いる河床変動の実態調査やダム堆砂との比較は十分に進んでいない.井川演習林での調査で機器の不調(水位センサー)や故障(UAV)が続いたためである.来年度は安倍川流域でも同様の調査ができるよう,静岡河川事務所の協力(データ提供の許諾)を取り付けた.
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今後の研究の推進方策 |
計画通りに進める.加えて,大谷崩での調査に海外(アメリカ合衆国,ニュージーランド,台湾)からの研究者の参加を得ることが出来たので,将来的には他サイトとの比較・共同研究などの発展が見込める状態となった.また,国土交通省静岡河川事務所とも相互にデータを提供することとなったので,社会還元の方策もより具体的に考えられる状況となった.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は大谷崩での土砂移動が活発で,それに伴ってUAVによるデータ取得による地形計測に力を入れたため,タイムラプスカメラや水位・水分計測機器のメンテナンスが十分に行えない部分があり,次年度に繰り越すこととした.また,井川演習林の調査でも機器の不調があったため,同様に次年度繰越とした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度調査の旅費と,それにかかる物品購入やサンプル分析,データ解析に要する費用とする.
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