研究課題
本年度は,地上レーザーなどによって高精細化した地形測量成果によって,土石流発生に地形条件が与える影響を明らかにした.観測結果から,同一の降雨イベント内においても飽和土石流と不飽和土石流が発生し,その区分は単純に雨量や土石流流量だけで行うことはできないことが分かる.そこで,地下水位の上昇に伴う斜面・渓床材料の安定解析から,不飽和・飽和条件下で土砂移動が生じる条件を力学的に求めた.渓床勾配に関して,土砂移動が生じない条件,不飽和土石流が発生する条件,および飽和土石流が発生する条件を,地上レーザースキャナーによる測量によって得られた数値標高モデル(DEM)に適用したところ,5m程度の解像度のDEMで飽和・不飽和土石流を良好に区分できることが明らかになった.両者が流域の不安定土砂量によってその発生比率を変化させることから,岩盤地形と堆積土砂の関係によって地下水位の上昇に伴う土石流発生メカニズムが評価可能と考えられた.すなわち,基岩形状(数年に一度程度,土石流が頻発する年に測量可能)と堆積土砂量のモニタリングに,分布型水文モデルなどを組み合わせることで,土石流発生条件は,その流動形態まで含めて良好に予測できると考えられた.安倍川流域における航空レーザー測量,空中写真測量,植生調査から,大谷崩末端での扇状地上の土石流の流下経路を推測した.土石流は扇頂に流入し堆積しつつ,下流方向へは複数の流路を取ることが明らかになった.流下方向の変化は単一の土石流の流下中にも発生し,土石流扇状地におけるこのような首振り現象が,流域への長期的な土砂供給量に影響を与えると考えられた.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件)
International Journal of Erosion Control Engineering
巻: 9 ページ: 165-173
http://doi.org/10.13101/ijece.9.165
第8回土砂災害に関するシンポジウム論文集
巻: - ページ: 193-198