研究課題/領域番号 |
26292079
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 利博 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30332571)
|
研究分担者 |
太田 祐子 国立研究開発法人 森林総合研究所, 森林微生物研究領域, チーム長 (60343802)
山下 香菜 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材特性研究領域, 主任研究員 (60353900)
伊藤 進一郎 三重大学, 生物資源学研究科, 招聘教授 (90092139)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 材変色腐朽 / 危険度診断 / 非破壊検査 / 音響波 / 材強度 / 人工腐朽 |
研究実績の概要 |
ケヤキ、オオシマザクラ、スギを用い、形状(4種類:真円、三日月形、中心スリット、辺縁スリット)や大きさ(3~4段階)を変えた人工空洞円板を用いた音響波(疑似ランダム波)の伝播速度を指標とした非破壊腐朽診断の結果を解析した。昨年度に設定した検知レベル、ノイズ偏差により、発振周波数(10~40kHz)を変えてその影響を調べた。上記空洞円板に加えていくつかの立木、円板の診断結果から、音響波の周波数が高くなるほど信号の伝播距離が低下することが確認されたが、高周波では以下のような特徴が認められた。小さな空洞は低周波では検知が困難だが高周波では容易である。高周波では推定される空洞部の位置や大きさが低周波より正確になる。スリット状の空洞に対しては高周波の方が低い速度の頻度が高く、推定空洞面積は大きくなる。また、各センサー間の伝播速度を精査することで円形の空洞とスリット状の空洞とを区別できる場合があることが示された。以上の結果から、異なる周波数を組み合わせることや診断画面に表示されない波形、伝播速度のデータを活用することで、通常の診断手順では検出できない情報を得ることができることが示された。 さらに本年度は、診断器に信号の減衰率を測定するソフトを組込むことで、少数ポイントではあるが減衰率分布を求めることが可能となり、伝播速度と組み合わせて診断精度の向上を図ることが可能であるか検討している。 また、来年度に腐朽程度(密度)、強度(曲げ、圧縮)と音響波伝播速度との関係を求めるための人工腐朽試験を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工空洞試験は針葉樹についても完了することができた。結果の解析は広葉樹1樹種で進み、複数の学会で発表した。他の樹種についても同様の解析をすることで成果を得ることができる状況である。 人工腐朽試験による密度や強度と測定指標との関連の解析については、1樹種で27年度中に培養、接種、初期のサンプリングまで進めることができ、28年度は試験を継続する。
|
今後の研究の推進方策 |
人工空洞試験については1樹種について解析できたため、他の樹種でも機械的に解析を進める。 人工腐朽試験は1樹種ずつ実施するが、所要時間を節減するため、各樹種の日程をオーバーラップして進める。 また、人工腐朽試験においては、材の条件、培養条件、接種菌の状態によって腐朽の進行速度が大幅に変わることがある。事前の予測や条件の調整が困難であるため腐朽進行速度によって全サンプルを用いた試験をやり直す必要が生じる可能性がある。そのための、試験材料の確保、加工の段取りを立てておく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
人工腐朽試験の接種の一部を次年度に変更したために、謝金支出の一部を次年度に先送りとした。 また、対照となる健全木の伐倒調査は実施したが、伐採可能な腐朽木が調査に十分適切でなかったため、条件のいい調査木を選定するために、この調査を次年度に変更した。
|
次年度使用額の使用計画 |
人工腐朽試験の接種のための謝金の一部として使用する。 また、適切な自然腐朽木を選定し、伐採調査、菌の分離、同定のため、交通費、運搬費、DNA分析を含む試薬、消耗品費として使用する。
|