研究課題/領域番号 |
26292087
|
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
高原 光 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (30216775)
|
研究分担者 |
百原 新 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (00250150)
津村 義彦 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (20353774)
出穂 雅実 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (20552061)
高橋 啓一 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 副館長 (50139309)
佐々木 尚子 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 研究員 (50425427)
三宅 尚 高知大学, 自然科学系, 准教授 (60294823)
林 竜馬 滋賀県立琵琶湖博物館, その他部局等, 研究員 (60636067)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 最終氷期最盛期 / 古植生 / 花粉分析 / 大型植物遺体分析 / 集団遺伝学 / 遺跡 / 脊椎動物化石 |
研究実績の概要 |
1.最終氷期最盛期(LGM)を含む花粉分析地点について,カウントデータの収集と整理を実施した。26年度には,16地点の花粉分析結果について,古生態学データベース (NEOTOMA Palaeoecology Database)に準拠したTilia形式でのデータ整理を実施した。2.九州南部(藺牟田池)では,LGMの植生変遷を解明した。四国では愛媛県(四国中央市など),高知県(宿毛市)にて,最終氷期に対比される堆積物の探索および試料採取を行った.また,高知(高知市など)で採取された機械ボーリング試料の提供を受け花粉分析を実施した。近畿では比良山系(スギヤ池)において,LGM堆積物からトウヒ針葉などを検出した。京都府神吉盆地,亀岡盆地,丹後半島において花粉分析,大型植物遺体分析によってLGMの植生を解明した。4.定量的な古植生復元を行うため,Revealsモデル(Sugita, 2007)を検討し,これに必要な,草本群落(ススキ,ヨモギ)の花粉生産量を測定し,樹木と同じレベルの花粉生産量を持つことを明らかにした。5.現生樹木の集団遺伝学的データ(DNAデータ)を充実させるため,スギ天然林14集団を3930 SNPの遺伝子マーカーで解析し,日本海側と太平洋側のスギが明瞭に遺伝的分化をしていることを明らかにした。6.北海道埋蔵文化財センター,千歳市埋蔵文化財センター,帯広市埋蔵文化財センターおよび岩手県埋蔵文化財センターに保管されている上部旧石器時代中期から後期の石器資料,炭化物,堆積物試料の分析を実施した。遺跡内人間行動,遺跡の地質編年に関してはデータが揃ったため,論文として公表した。MIS3~MIS2の時代の脊椎動物資料のデータを増加させるために隠岐諸島沖の日本海産ナウマンゾウ臼歯と切歯のAMS14C年代測定を実施し,その結果,右下顎第3大臼歯は約32000年前のものであった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度当初に計画していた1.花粉分析等の既存データの収集,2.データが少ない地域における花粉分析,大型植物遺体,年代測定の推進,4.古植生復元のための数的処理方法の検討,5.現生樹木の集団遺伝学的データ(DNAデータ)の拡充,6.北海道,東北におけるLGM前後の旧石器時代の遺跡発掘資料についての収集,大型哺乳類の分布変遷資料を収集などの項目について,本研究グループの研究者の精力的な研究推進によって,最新の古植生変遷データを得ることができ,さらに,最終氷期最盛期の植生図を作成するための重要な資料が格段に増加した。また,連携研究者の杉田真哉教授(タリン大学)との議論によって,定量的な植生復元に,Revealsモデル(Sugita, 2007)を使うことが適当であることを確認した。さらにこれに必要な,植物群落の花粉生産量を調査できた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降もさらに古生態学データ,考古学的データ,脊椎動物データ,集団遺伝学的データの充実を推進していく予定である。特に平成27年度には,各研究者のこれらのデータを対照して,議論を行い最終氷期最盛期(LGM)の北東アジアの植生図案を作成し,国際第四紀連合大会(INQUA)で発表予定である。さらに,古植生復元方法であるRevealsモデルを日本の花粉分析データに適用するために,まだ,未解明であるゴヨウマツ類などのマツ科針葉樹やイネ科などの草本植物群落の花粉生産量を明らかにする計画を進めている。 さらに,LGMだけではなく,北東アジアにおける亜間氷期(4万年前),最終氷期最盛期(2.5万年前),晩氷期(1.4万年前),後氷期初期(1万年前),中期(8千年前,5千年前)における各樹木分類群の分布図,古植生図を作成し,これらの古植生と人の拡散・移動や動物相の変遷との亜関連を明らかにするために,北東アジアにおける地点ごとの花粉分析データ,大型植物遺体データ,現生樹木の集団遺伝学データ(DNAデータ)を充実させていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現在,大阪市立自然史博物館に収蔵されている最終氷期の大型植物化石の標本調査を進めているが,当該年度の標本調査に時間がかかり,当該年度内に終了予定の調査を次年度に行う必要が生じ,それに伴う旅費や標本の放射性年代測定費の出費が見込まれたため。 また,堆積物の年代を決める際,花粉分析や大型植物分析などが十分に進展した後に,植生変遷が起こる層準を決めたうえで,放射性炭素年代によって年代測定をおこなう。そのため,次年度に十分データが出そろってから年代測定を行う必要があったため,この経費として次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は博物館収蔵標本検討のための旅費や,標本,堆積物の放射性年代測定費に使用する。さらに,試料採取,花粉分析等の経費,データベース作成経費,名古屋で開催される国際古植物学花粉学会議(INQUA)での成果発表,国際誌への投稿費用等に使用する。
|