研究課題
水資源保全のための林分密度管理図を調製することを目的として,いくつかの観測と解析を行った。主な知見は以下の通りである。これらの知見は,今後,水資源保全のための林分密度管理図を調製していく上で有用である。1. わが国の様々な地域のスギ・ヒノキ林において収集されたデータをもとに,胸高直径と辺材面積との関係を解析した。その結果,両者の間に1.6乗則とも言える法則が成り立っていることがわかった。2. 熊本県立阿蘇中央高校清峰校舎小柏演習林内のヒノキ高齢林2林分において,約半年間にわたって遮断蒸発を観測した。その結果,高齢林分においても,既存の研究において報告されている林分密度と遮断率との関係式が良く適合することが示された。3. 宮崎大学農学部田野フィールド(演習林)内のヒノキ高齢林において,遮断蒸発と蒸散を観測した。その結果,ヒノキ上層木による蒸発散の降水量に対する割合は約30%であるのに対し,広葉樹からなる低木層の蒸発散量は約15%であることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
九州地方の針葉樹人工林を対象として,水資源保全のための林分密度管理図を調製するために必要なパラメータを取得できた。また,密度管理図の調製のための基本モデルを構築できた。
昨年度に設定した試験地での観測を継続して実施するとともに,既存の文献データも併用しながら,蒸発散と林分構造との関係に関するモデルの完成度を高めていくことを計画している。また,得られた成果について,学会発表と論文投稿を積極的に行っていく予定である。
物品費,旅費および人件費・謝金において次年度使用額が生じた理由は以下の通りである。物品費については,観測初年度ということもあり,現有している物品を一部使用したためである。旅費については,調査は計画通りに遂行できたものの,本務との兼ね合いから学会への参加を見送ったためである。人件費・謝金については,研究補助を依頼できる学生の人数が当初の計画よりも大幅に少なくなったためである。
初年度の観測において機器の故障が発生するなどしたため,新たに機器を購入することを計画している。また,学会発表を積極的に行うことで旅費を使用するとともに,論文投稿のための英文校閲や学生による研究補助を依頼することにより,旅費ならびに人件費・謝金を使用する計画である。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件)
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