研究課題
近年,わが国における人工林管理の目的は,木材生産のみならず,水資源の保全のような生態系サービスの高度発揮も含まれるようになってきている。しかし,従来の密度管理指針については,木材生産を目的として作成されており,生態系サービスを意図した指針は明らかにされていない。そこで本研究では,水資源保全のための林分密度管理図を調製することを目的として,いくつかの観測と解析を行った。主な知見は,以下の通りである。これらの知見は,今後,研究の目的とする密度管理図を調製していく上での基礎となる。1. わが国の様々な地域のスギとヒノキを対象として,胸高直径と辺材面積との関係を解析した。また,林分密度と胸高直径との関係も解析した。これらの結果から,辺材面積の保存則を誘導し,過密林分における蒸散量のモデル化に成功した。2. 熊本県立阿蘇中央高校清峰校舎小柏演習林の高齢ヒノキ林において,2年間にわたって遮断蒸発を観測した。その結果と既存の知見をもとに,林分構造と遮断蒸発との関係を解析したところ,林分密度と遮断率との関係を指数関数によって記述できることがわかった。3. 以上の知見をもとに,水資源保全のための林分密度管理図の調製方法について検討した。その結果,この密度管理図は,横軸を林分密度,縦軸を蒸発散量とし,複数の等平均直径線によって構成すべきと考えられた。この図によって,間伐ならびに林分成長による蒸発散量の変化を適切に推定できると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
九州地方のスギ・ヒノキ人工林を対象として,水資源保全のための林分密度管理図を調製するために必要なモデルの関数形ならびにパラメータを決定できた。
昨年度までに設定した試験地での観測を継続することにより,また,より多くの先行研究事例を収集することにより,さらなるモデルパラメータの精緻化を進める。そして,得られた成果を国内外の学会において積極的に発表するとともに,国際的な学術雑誌への論文投稿を一層進めていく。
調査の補助を学生に依頼せず,助手および家族に依頼したため,人件費・謝金での支払金額が少なくなった。また,8月下旬の台風により試験地が甚大な被害を受け,以降の観測を打ち切ったため,旅費ならびに人件費・謝金の支払額が少なくなった。以上の理由により,次年度使用額が生じた。
昨年度の台風により被害を受けた観測機器の修繕・再購入ならびに高頻度での観測により繰越金を使用することを計画している。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 3件、 査読あり 16件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
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