研究課題/領域番号 |
26292095
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉田 正人 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30242845)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プローブ顕微鏡 / SPM / AFM / 細胞壁 / 材形成 |
研究実績の概要 |
走査型プローブ顕微鏡は次の2つの利点をもつ次世代の顕微鏡である。1つめは、電子顕微鏡と同程度の高倍率観察が可能でありながら、電子顕微鏡の観察では問題となる電子線による試料の劣化や破損がない点である。探針を試料と接触させない非破壊観察が、これを実現させている。2つめは、試料の形状の観察だけでなく、試料の物理的や電気的、機械的な特性を形状と同時に測定できることである。この走査型プローブ顕微鏡を用いて樹木細胞壁の観察を行い、従来の手法では得ることができなかった新たな知見の探索に本研究は挑んでいる。 申請者はこれまで研究で、細胞壁は日周性をもって堆積して肥厚していることが明らかにしてきた。できあがった細胞壁の構造は、日周性をもって作られた影響をどのように受けているのであろうか。さらに、できあがった細胞壁の性質は、日周性の影響をどのように受けているのであろうか。これらを明らかにすべく、形状と性質の複合観察が可能な走査型プローブ顕微鏡を細胞壁の研究に新規導入した。 走査型プローブ顕微鏡を細胞壁研究で用いるため、第一に行うことは、適切な試料調整方法の確立である。細胞壁の構造を正しく知るためには、どのように観察表面を作成すればよいのか。観察表面の作成方法の違いは、物理的特性として計測される情報に影響するのであろうか。試料調整方法を適切に選択する必要がある。 本年度の研究実績として次の成果を得ている。細胞壁を構成するセルロースミクロフィブリルの横断面を観察する試料を作成するには、試料を凍結した状態で、観察表面を瞬時に融解させながらスチールナイフで仕上げる調整方法が適していた。分化中の細胞を観察する試料には、包埋する必要があり、1マイクロm厚のエポキシ樹脂切片が適していた。セルロースとヘミセルロース・リグニンの両者の差は、形状情報よりも位相差情報に大きく現れる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、走査型プローブ顕微鏡を細胞壁研究で使用するための手法の確立を目指していた。この目的は、構造を観察する手法の確立を得たことで達成された。導入した機器は順調に稼働し、本機を用いた研究展開の可能性を大いに実感できた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、構造の観察に主眼を置いて研究を進めてきた。次年度は物性計測として、粘弾性情報を測定できるように走査型プローブ顕微鏡を性能向上させる。そして、物性値を正しく評価する手法の確立を目指す。特に、分化中細胞壁の観察と計測には試料の包埋が必要である。そのため、包埋の種類が物性に影響するのか、どのような包埋材が適しているのかを正しく把握する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
走査型プローブ顕微鏡は探針プローブを消耗する。プローブの平均耐用時間と研究計画から、消耗品であるプローブ費用を見積もって計画立案した。本年度購入したプローブの耐用時間は、短いものも長いものもあり、個体差が大きいかった。購入したプローブは全体として平均よりも長い耐用時間であったため、当初に予定していたプローブ数よりも2組少ないプローブ消費となり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度のプローブの購入費用にあてる。
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