研究課題
現在用いられている海洋生態系モデルの多くは、プランクトン相を少数のコンパートメントで代表しており、環境の大きく異なる海域の生態系を統一的に扱うことは難しかった。本研究では、海洋プランクトン相の広域的な分布・動態を再現可能な新しい自然選択モデルの開発を目的とした。自然選択モデルは、潜在的に多様な生物相のうち環境に適合したものが自然選択的に卓越するという考えに基づいており、本研究では多様なパラメータのコンパートメントを多数与えることでモデル化を計画している。平成26年度は、既取得の動物プランクトンデータの分析、動物プランクトンの生活史に関する文献の整理、自然選択モデルのベースとなるNPZDタイプのモデルパラメータのチューニングと解析に関連し、下記の取り組みを実施した。1、ベンチトップ型ビデオプランクトンレコーダを用い、動物プランクトンのホルマリン固定資料の分析を行った。主にカイアシ類を対象とし、サイズ別に個体数を計測し、フローセルにサンプルを流すことで画像として記録した。2、分析した動物プランクトン群集組成の解釈を進めるため、群集構造の解析を進めると同時に、カラヌス目・キクロプス目を中心とした各種の生物学的特性および生活史情報を文献から整理した。3、自然選択モデルの構築はNPZDタイプのモデルで種数を拡張することによって行う計画である。そのベースとなるNPZDタイプモデルを北太平洋の渦解像海洋循環モデルと結合して駆動、パラメータのチューニングを行った。
2: おおむね順調に進展している
研究はおおむね順調に推移している。プランクトンデータの分析、文献整理、モデリングの3つの取り組みを進め、それぞれ一定の成果を得ている。また、研究分担者および協力者と2回の打ち合わせを行い、得られた結果に関して集中的に議論を行い、研究の進捗・方針に関して適切に対応することができている。研究協力者からの情報提供により、動物プランクトン群集構造の新たな解析方法を会得し、一層の解析進展が期待できる。
平成27年度以降は、プランクトンデータの分析、群集構造の解析とモデリングを中心に、平成26年度に得られた成果を拡張・進展させる。プランクトンデータは動物プランクトン以外にも、植物プランクトンの検鏡および光学的分析を進める。動物プランクトンの群集構造については、特に成長段階と世代時間に着目して、自然選択モデリングに展開する。モデリングは分析データを考慮した領域自然選択モデルと、北太平洋全域の物質循環モデルの結合を進める。
情報収集・成果発表に要した旅費および分析の外部委託を想定した費用が予定より少額であったため、次年度使用額が生じた。旅費は安価な航空券を入手できたため予定より安く、また分析については、分担者の貢献により外部に委託をせずに済んだことにより少額となった。
自然選択モデルのベースとなる北太平洋の低次生産モデルの構築に関して、研究開始時に想定していたよりも作業量が多く、研究協力者に委託する。このため、研究に必要な消耗品や謝金の支出が必要となる。また、平成26年度に得られた知見を検証するための観測・分析用消耗品、成果発表に要する旅費への支出も予定している。
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Journal of Oceanography
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