研究課題/領域番号 |
26292099
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 幸彦 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (80345058)
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研究分担者 |
田所 和明 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, 主幹研究員 (70399575)
日高 清隆 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主任研究員 (70371838)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海洋生態系モデリング / 自然選択 / 物質循環 |
研究実績の概要 |
現在用いられている海洋生態系モデルの多くは、プランクトン相を少数のコンパートメントで代表しており、環境の大きく異なる生態系を統一的に扱うことは難しかった。本研究では、海洋プランクトン相の広域的な分布・動態を表現可能なモデルを構築することを目的とした。基本となるアイデアは、「潜在的には無数に存在するプランクトン相から環境に適応したが出現する」というものであり、この「適応」度をフィールドの知見から得、多くのプランクトン機能群、もしくは適応度を有するプランクトン群集の動態を高解像度大循環モデルの出力を用いて駆動することにより、最適なモデルアルゴリズムを得ることとした。 平成26年度までに、黒潮域、東北沖海域におけるメソ動物プランクトンの群集構造とその季節的変動を明らかにし、生態的機能に関わる基本的特性であるサイズに注目した分類を行った。また、植物および動物プランクトン機能群を多数含む1次元生態系モデルのプロトタイプを改良し、栄養段階を経るエネルギー(栄養塩)転送効率について精査した。生態系モデルにおける「自然選択」の表現には、休眠状態からの爆発的増加の再現が鍵となるが、その休眠状態の表現が今までは十分に検討されていないという問題もあった。平成27年度には、沿岸、外洋の渦鞭毛藻類や珪藻類の休眠状態に関する文献調査を行い、モデル化の基礎データとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむね順調に推移している。プランクトンデータの分析、文献の整理、モデリング(物理データの精査と生態系コードの改良)の3つの取り組みを分担者と協力して進め、それぞれ成果を得ている。研究分担者および協力者とは直接の打ち合わせのほか、学会やシンポジウム等の各種機会およびメールにて積極的に打ち合わせを行い、モデリングの鍵となる生態的特性の反映の方法について検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、プランクトンデータの分析等のフィールドの知見をモデリングの成果により有機的に反映するため、米国スクリプス海洋研究所の研究者と連携する。循環および生態系の東西比較、最先端の高解像度モデリング、自走式観測装置を用いた水質やプランクトンの高解像度観測、およびそれを反映する生態系・物質循環モデリングの情報収集および手法習熟により、各地の多様のプランクトン相の統一的な表現可能なモデル構築を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集・成果発表に要した旅費と、モデルデータ処理の補助委託を想定した費用が予定より少額であったために、次年度使用額が生じた。旅費は安価な航空券を入手できたために予定より安くなった。また、モデルデータ処理については、業務が順調に進行したため支払額が抑制された。
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次年度使用額の使用計画 |
プランクトンデータの分析等のフィールドの知見をモデリングの成果により有機的に反映する目的で、米国スクリプス海洋研究所の研究者と連携する。このため、現地への渡航および約4ヶ月間の滞在費用が必要となる。また、モデリング推進のための環境整備として、ハードディスクおよび追加解析用コンピュータの購入も予定している。
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