研究課題/領域番号 |
26292099
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 幸彦 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (80345058)
|
研究分担者 |
日高 清隆 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主任研究員 (70371838)
田所 和明 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, 主幹研究員 (70399575)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 環境の微細構造と生物多様性 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、日本近海におけるノルパックネットの歴史的データの解析から、カイアシ類等のメソ動物プランクトンの多様性が空間的、また季節的に大きく変動していることが明らかとし、動物プランクトンの餌料となる植物プランクトン種組成データの整備、遺伝子解析を用いた多様性の評価のための環境整備を行ったほか、黒潮・親潮域との比較解析のため研究協力者である米国スクリプス海洋研究所Daniel Rudnick 教授を訪問し、水中グライダーによるカリフォルニア海流域のモニタリングデータの解析を行った。 水中グライダーの解析は、カリフォルニア海流の影響を受けて沖合に分布する低温・低塩分の亜寒帯系水と、カリフォルニア潜流により沿岸を極向きに輸送される高温・高塩分の水塊の間に形成される前線およびそれに伴う渦活動に焦点を当てた。モントレー湾沖、Pt. Conception沖、Dana Pt.沖の3つのラインの観測結果を解析した結果、10~20 kmスケールの前線とそれに伴う擾乱が夏季に強化され、秋季から冬季にかけて伝播していく様子を捉えた。空間スケールの小さい現象の変動は上層で高く、ポテンシャル密度26.3σθ付近で最小となっていた。前線の沿岸側と沖合側、また前線帯では植物プランクトンから高次捕食者まで幅広い栄養段階で生物相が異なっていることが知られていることから、今後は解析で捉えられた物理環境の変動が生物生産や食物網動態にどのように影響しているか、解析を進めていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度までの物理環境データ解析、プランクトン資料整理、文献調査およびモデリングに関する取り組みから、モデル化で想定していた海洋のプランクトン多様性の種・栄養段階レベルでの実態のほか、群集の機能に影響する重要な要因として種内で大きく体サイズ・形態を変化させる生活史の考慮が必要であることが明らかとなってきた。また、群集の多様性を生じさせる根本原因としての物理的な輸送・混合過程についても、従来の観測データから把握されてきた規模よりもさらに小さいスケールで空間的な非一様性と時間的な非定常性が重要な役割を果たしていることも示唆されている。このような知見のもと、当初予定を変更し、物理観測およびプランクトン資料を精査した上で、生物相の海域間差異・成長段階の違いによる生態的地位を検証するモデルの開発を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成29年度は、これまでのデータ解析・モデリングによる知見を総合し、メソ動物プランクトン群集の海域間差異と、成長段階の違いによる生態的地位の変化に着目し、モデルの完成を目指す。また、海洋大循環モデルを用いた粒子輸送実験により大洋スケールでの種の相互作用、連結性を明らかにし、プランクトンの広域的な動態に影響する物理機構を明らかにする。
|