研究課題/領域番号 |
26292101
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
外丸 裕司 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (10416042)
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研究分担者 |
山口 晴生 高知大学, 自然科学系, 准教授 (10432816)
紫加田 知幸 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, 研究員 (40603048)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 珪藻 / ウイルス / 死滅 |
研究実績の概要 |
海洋の最重要基礎生産者である珪藻の挙動解析は、地球上の物質循環システムを理解する上で必要不可欠である。過去の研究により、珪藻の増殖に関わる諸要因は解明されつつあるが、その死滅要因や減衰過程はほとんど未解明のままである。そこで本課題では、水圏生態学分野の最大のフロンティアである「珪藻の死滅に関わる生態過程」の徹底解明を目指す。 今年度は環境の急激な環境変化が珪藻の死滅に与える影響を、静置培養を用いて評価した。死滅細胞の検出には、SYTOX-Green染色法を採用し、フローサイトメトリーにより死細胞と生細胞を定量的に検出できる系の構築を行った。本実験の結果、珪藻Chaetoceros tenuissimusは塩分30から20の急激な環境変化においても、ほとんど死滅せず、増殖を続けられることが明らかになった。また同様な環境でウイルス感染の影響があった場合においても、明らかなウイルスによる死滅の促進は検出されなかった。そのため今回設定した環境変動内では、珪藻は生存という意味において十分な適応能力を持つものと推察された。珪藻本種の増殖に対する光環境の影響についても基礎データを蓄積した。珪藻の沈降についても予備試験を実施し、問題点の抽出を行った。また、今年度は珪藻細胞の生理状態を把握するための基盤情報として、珪藻の全ゲノム情報の解読を実施し、データベースを構築することに成功した。さらに珪藻細胞の生理状態をモニタリングするための各種化学分析系の構築に着手した。現場調査も定期的に実施し、珪藻の挙動を追跡することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的としていた環境変動と珪藻の死滅との関係について実験を進めることができた。また今後、珪藻の死滅に与える影響を解析するために必要な基盤情報ならびに技術の構築を着実に進めることができた。各課題について着実にデータ蓄積を行うことができたため、本研究課題は順調に進行したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
物理・化学要因が珪藻の増殖に与える影響をさらに深く調べていくため、最適増殖光環境を設定した実験システムの構築に着手する。当該システム上での珪藻の培養状態を確認し、各種環境要因の影響について詳細に調べていく。珪藻の生理状態を把握するための分析・検出技術の高度化を進めていく。さらに珪藻の沈降を調べるための実験系の構築についても、さらに検討を重ねる。また、現場における珪藻とウイルスに関するモニタリングも定期的に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度,十分な余裕をもって課題に取り組んだ結果,早期に目標を達成することができ,それによって基金に残が生じ た。一方で,当初予定していた研究課題を次年度に繰り上げて達成することを視野にいれ,本年度の基金残額については繰り越す必要があると判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
予算は新たな実験器具の購入などに充てる予定。
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