研究課題
海産浮遊珪藻Chaetoceros tenuissimusの細胞内含量依存型の増殖速度と硝酸・リン酸輸送体の発現との関係をqPCRにより解析した結果、N制限では硝酸輸送体がリン酸輸送体よりも相対的にたくさん発現し、P制限では逆になることが明らかとなった。このような栄養塩利用戦略によって,本珪藻は栄養塩の減少にともなう衰退に抗おうとしつつ、増殖と死滅を繰り返しているものと推察された。本珪藻の塩分ショックによる死滅の発生を、昨年度までに開発した手法によって総合的に検討した。その結果、本種は塩分30からの塩分変動に対する耐性は比較的強いことが予測されるが、塩分10まで急激に低下すると、平常時よりも死亡率が100倍程度高まることが予測された。一方、塩分が急激に変化する際にウイルスが同時に存在した場合、塩分変動の影響によってウイルス感染による死亡が促進される可能性については統計学的に有意な結果が得られなかった。本種珪藻のゲノム解析から各種栄養制限時に強く発現すると予測される多くの候補遺伝子を抽出する事に成功した。その一部については、発現解析でも部分的に支持することが出来た。本種珪藻の沈降実験に必要な装置を新たに組み立てた。本装置で当該珪藻の沈降速度を評価した結果、リン欠乏のみならず窒素欠乏においても、本種の沈降速度はほとんど変化しないことが明らかとなった。2015年4月~2016年3月の有明海の水柱を対象として、本種の現存量と本種感染性ウイルスの出現状況を調査した。その結果、当該海域において本種は最高で数万細胞/mlのブルームを形成するものの、感染性ウイルスの出現は確認できなかった。ただし、これまでの調査結果では、底泥中に本種感染性ウイルスが検出されている。このことからは、有明海では本種感染性ウイルスは極めて低い密度ではあるが、珪藻に死亡をもたらしているものと推察された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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