研究課題/領域番号 |
26292102
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
荒木 仁志 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20707129)
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研究分担者 |
森田 健太郎 独立行政法人水産総合研究センター, 北海道区水産研究所, 主任研究員 (30373468)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 野外調査 / 経年変化 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトでは、日本においてその現状すら正確に把握されていない野生サケについて、生態・特性や漁獲資源量への貢献度を遺伝的基盤にまで掘り下げて解明することを目的としている。 H26年度は、(独)水産総合研究センター(現在、国立研究開発法人)の協力の下、サケ遡上期にあたる9月から本年1月末までの期間、千歳川、斜里川水系の札弦川・エントビ川、斜里川近郊の伊茶仁川の四河川を中心とした野生サケ調査を行った。H26年度は9月の石狩地方の大雨を除いて秋期の天候が安定したこともあり、下流に川を塞ぐ形で設置されたウライ(サケ捕獲施設)がほぼ完全に機能した。これにより9月には川の上流で産卵する個体は見られなかったものの、10月から1月にかけては上流部での遡上・産卵個体とその遺骸が確認され、これら四河川で収集した野生サケDNAサンプルは合計470個体となった。 これらの自然産卵個体に加え、千歳川、遊楽部川、徳志別川、斜里川水系においてはウライで捕獲された個体からも水産総合研究センターの協力によりDNAサンプルを採集した。そのサンプル数は千歳川で1200、遊楽部川で1000、徳志別川で300、斜里川水系では270となった。これらのサンプルは前期遡上群として、自然産卵個体群との遺伝的基盤の比較解析に用いる予定である。また、水産総合研究センターで保管されている上記四河川の経年サンプルについても状態確認を行い、前期・後期遡上群の選別を行った。これらサンプルについても併せて解析を試みる。 H26年7月には申請者がホストとなり、北海道大学において二日間にわたる国際シンポジウムを行った。本プロジェクトのため招聘したオレゴン州立大学の海外共同研究者、Kathleen O’Malley博士には全面的な協力をご快諾いただき、既にサケ遡上期に影響が示唆される候補遺伝子の解析方法について具体的な情報交換を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書・H26年度実施計画にある河川遡上魚調査において、ほぼ予定通りのサンプリングが実施され、野生サケの生態・遺伝情報を得ることが出来た。また、これらのサンプルからの本格的なDNA解析に向けてサケに特異的なプライマーセットの試験を行い、良好な結果を得ている。経年サンプルの解析と合わせ、本年度に大規模な解析を行う準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は水産総合研究センターの全面的な協力もあり、ほぼ予定通りの野生サケ調査を行うことが出来たが、同時に大規模な野外調査継続にあたってのロジスティックスの問題も明らかになった。今後は収集したサンプルのDNA解析に重点を移すことになるが、DNA抽出・解析実験においても一部限定要因によって少人数での早期解析が難しい、という問題が明らかになった。野外調査については今後、対象河川を絞るなどして対処する予定であるが、分子実験室については最大のネックとなるDNAの同時抽出数を倍増させるため、プレート単位(96サンプル)でのDNA抽出が可能となるよう、プレート遠心機の導入を行う。また、並行して進めている環境DNAを用いた新しいバイオマス推定法(別プロジェクト)でも顕著な進展が見られたことから、今後は野生サケについてもこの方法を導入した簡易バイオマス推定を試み、目視・捕獲によるこれまでの調査結果との整合性を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
この研究プロジェクトのための実験補助員の選定がやや遅れたことと、当初予定していた分光光度計の購入を取りやめたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
実験補助員については当初の予定を期間全体の後半にずらすことで、H27、H28年度においても継続して本プロジェクトの推進に貢献していただく。また、抽出したDNA量の推定はH26年度に本研究予算で購入した定量PCRシステムを利用する一方、DNA解析の大規模化に伴い効率化に必須となりつつあるプレート遠心分離器(96サンプルを同時に遠心分離できる装置)の購入を検討している。これらの変更により、より多くのDNAサンプルを短期間に抽出・解析することが可能となる。
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