研究課題
本研究プロジェクトでは、日本においてその現状すら正確に把握されていない野生サケについて、生態・特性や漁獲資源量への貢献度を遺伝的基盤にまで掘り下げて解明することを目的としている。野生サケ調査は千歳川、豊平川、遊楽部川、伊茶仁川、斜里川の四河川で実施した。このうち千歳川由来の112個体、豊平川由来の124個体の組織標本についてDNA抽出を実施し、マイクロサテライト13遺伝子座における前期群、後期群の集団遺伝構造を解析したところ、再導入後の歴史の浅い豊平川では遡上時期による遺伝的な分化は見られなかったものの、その再導入の由来となった千歳川においては前期群・後期群間に有意な差異が見られ、また豊平系群は千歳川前期群と遺伝的に近似していることが分かった。これらの結果は、近年千歳川の種苗放流が前期群に集中して行われ、また豊平川への千歳前期群の放流が実施されていることを反映していると同時に、野生サケ主体と考えられる千歳川後期群が千歳川前期群とは遺伝的に異なる組成をもち、「野生の血」を未だに色濃く残していることを示唆している。一方で、これらのサケの遡上時期を決定する遺伝子については、部分的ながら候補遺伝子の集団遺伝解析を実施したものの、当初期待されたほどの強い分化は見られず、同一河川内集団においては量的な多数の遺伝子が遡上時期を決定している可能性を示唆した。今後はこれらの結果を学術論文として発表すると共に、遊楽部川、伊茶仁川、斜里川についても千歳川同様の遺伝的分化傾向が見られるのか、更に解析を進める予定である。更に最終年度となったH28には、本研究から得られた知見を基に、広く野生生物の特性や人工飼育の影響一般に関する研究および論文執筆を行い、Philosophical Transactions of the Royal Society B をはじめとする3篇の学術論文を発表した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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