研究課題/領域番号 |
26292105
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮崎 勝己 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 講師 (20263064)
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研究分担者 |
玉置 雅紀 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (00311324)
冨山 毅 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (20576897)
山田 勝雅 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 西海区水産研究所, 任期付研究員 (80569195)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロサテライトマーカー / 集団遺伝解析 / カイヤドリウミグモ寄生率 / シオフキ / 宿主肥満度 / 人為的拡散 |
研究実績の概要 |
前年度次世代シーケンサーを用いて開発した36種のマイクロサテライトマーカー候補から、フラグメント解析により14種のマーカーを選抜した。これらのマーカーを用いた予備的な集団解析により、このうち13種のマーカーが実用的に使用可能である事を確認した。またクラスター解析により、予備的解析で用いた国内カイヤドリウミグモ3産地から得られた個体群が大きく3つのクラスター(遺伝子型)に分けられる事を確認し、うち1つの遺伝子型が特定の1産地に集中していた事と、遺伝子流動性及びヘテロ接合度の比較から、残りの2産地のどちらか一方の産地からもう一方の産地へ人為的拡散が起きた事が示唆された。また8種のマーカー候補を新規に開発した。 東京湾で野外調査を行い、採集したシオフキを用いて、非潜砂貝と潜砂貝とでカイヤドリウミグモ寄生率や宿主肥満度を比較し、松川浦のアサリで確認したものと同様の傾向(非潜砂貝の方がウミグモ寄生率が高く宿主の肥満度が低い)を認めた。また室内実験により、寄生ウミグモ個体の宿主間移動の可能性について検討し、寄生中に宿主間を移動はしていない事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後の詳細な集団遺伝学的解析に必要なマイクロサテライトマーカーを開発し、その有効性を検証する事が出来た。また予備的解析により、日本産カイヤドリウミグモの産地について、少なくともその一部が人為的拡散に起因する事を示す事が出来ている。 カイヤドリウミグモの種分類の問題点を検討するために必須である、地中海産及びアフリカ産同属サンプルについて、前者のサンプルの入手に目処が立てられている。 カイヤドリウミグモの寄生に伴う宿主の動態について、アサリに関するデータを既に論文として公表出来たと共に、別種の二枚貝(シオフキ)でもデータを取ることが出来ている。 寄生ウミグモの食性の特徴を把握するための安定同位体を用いた解析について、その方法が確立出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
集団遺伝学的解析については、予備解析で3産地のサンプルと13種のマイクロサテライトマーカーを用いたが、産地数とマーカー数を増やしてより詳細な解析を行う。特にカイヤドリウミグモ各地域群の集団構造解析により、それぞれの地域群の由来や移入時期の推定を目指す。 形態形質の検討から、カイヤドリウミグモ属3種(日本産・地中海産・アフリカ南部産)が全て同種である可能性が出てきたので、日本産以外の2種について標本の入手に努め、分子系統解析による種分類の再検討を行う。 これまでの研究で、カイヤドリウミグモが出現した主要産地(東京湾・三河湾・松川浦)間で、出現確認以降、また東日本大震災前後での寄生動向が異なることが明らかになっており、これまでに得られた様々な野外調査・室内実験の結果を総合的に再解析し、産地間の動向の違いをもたらした要因を推定し、漁業被害軽減に繋がる知見を得る。 初期の大量発生時に、寄生ウミグモがどの様にしてアサリの大量斃死を引き起こしたのかを明らかにするために、安定同位体を用いた解析を行い、寄生ウミグモの食性の様相やその変化を調べると共に、自由生活に移行後の成体との食性の比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロサテライトマーカー作成が当初の見通しより効率よく進行し、物品費での試薬購入が当初見込額より低く抑えられたため。また野外調査で使用した車のガソリン代(物品費)が当初見込額より低く抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
それぞれ、マイクロサテライトマーカー作成費用及び野外調査時のガソリン費用に組み込んで、物品費として使用する。
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