研究課題/領域番号 |
26292106
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
海野 徹也 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (70232890)
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研究分担者 |
不破 茂 鹿児島大学, 水産学部, 教授 (70094175)
池田 譲 琉球大学, 理学部, 教授 (30342744)
宮崎 多惠子 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (60346004)
今井 秀行 琉球大学, 理学部, 准教授 (10359987)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アオリイカ / 資源貢献 / 分類 / 遺伝 / 視覚 / 行動生態 |
研究実績の概要 |
アオリイカ類の学名調査において、英国王立外科大学のハンタリアン博物館と英国自然史博物館およびフランス国立自然史博物館でシノニム標本の確認作業を実施した。西日本において漁獲されたアオリイカをDNAマーカーによって種判別した。その結果、アカイカの出現は高知宿毛にて1.8%、鹿児島甑島にて3.6%、種子島にて62.8%、屋久島にて100%であった。 シロイカとクアイカの網膜からRT-PCR法によりロドプシン遺伝子を単離した。全長配列はいずれも1359塩基で452残基のアミノ酸をコードしていた。塩基置換は8ヶ所あり、うち2ヶ所はアンシノニマスな置換であったが吸収波長をシフトさせる重要キーサイトに変異はなく、両型の波長感度はほぼ同じであると推察された。 沖縄島沿岸よりクアイカ卵塊を採集し、孵化後の個体について、群れの形成過程を経時的に観察するとともに、生残過程についても追跡した。その結果、本種はおおよそ30-40日齢で群れをつくり始め、遊泳能力も獲得することが明らかとなった。また、90日齢に至る飼育経過はおおむね良好であり、クアイカが安定して飼育可能であることを確認した。これらの知見は、クアイカの天然での生残過程を知る上で、また養殖を考える上で有効なものとなり得ると考えられる。 種子島および屋久島においては、水深2~20m、21~40m、41~53mにて採集された個体のうち、アカイカと判別された個体数はそれぞれ、27個体(39.1%)、35個体(89.7%)、68個体(100%)であった。また、アカイカはシロイカに比べ利用水深が深いことが示唆された。得られた知見は、来年度以降のバイオテレメトリに応用予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、① 3種の分類と分布ならびに資源貢献の把握、② 高感度DNAマーカーによる保全単位の解明、③ 視覚器の発達、成群形成メカニズムに基づく資源動態の解明、④ バイオテレメトリと遺伝的解析に基づく繁殖生態の解明、の4つの中課題として、域優良資源であるアオリイカ3種の生活史の解明に挑み、得たれた知見を資源管理や増殖・保全へと還元する。①について、分類のための視察および情報収集も順調に進んでいる。② 高感度DNAマーカーによる保全単位の解明については、26年度に集団解析のためのサンプル収集が完了し、以後、分析を行う予定である。③ 視覚器の発達、成群形成メカニズムに基づく資源動態の解明、については、3種のロドプシンのクローニングも目処が立ち、分子ツールも確立された。また、クワイカについて飼育技術が確立され、成群に関する基礎的知見が収集できた。④ バイオテレメトリと遺伝的解析に基づく繁殖生態の解明、については、アカイカとシロイカの遊泳水深の違いが明らかになった。えられた知見をベースに、バイオテレメトリ用の水圧センサーを選定し、本格的な調査が行える。 以上、4つの課題について概ね順調に進行し、成果も着実に蓄積出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
① 3種の分類と分布ならびに資源貢献の把握、② 高感度DNAマーカーによる保全単位の解明、③ 視覚器の発達、成群形成メカニズムに基づく資源動態の解明、④ バイオテレメトリと遺伝的解析に基づく繁殖生態の解明の4つの中課題については、概ね順調に進行し、成果も着実に蓄積出来ている。来年度は三重大学の調査船を用いて、南西諸島を中心にアオリイカイカ類のサンプリングを計画し、得られたサンプルを用いて有益な情報を得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度は、アオリイカ類の利用水深を釣獲で調べ、バイオテレメトリ用の超音波発信器に付随する水圧センサーの範囲について基礎的知見を得たのみで、予定していた水圧センサー付きの超音波発信器を1台しか購入しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度は、26年度に購入できなかった水圧センサー付きの超音波発信器を購入し、アオリイカイカ類の遊泳水深や産卵水深について情報を得る。
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