研究実績の概要 |
パラオ海域より採集したアオリイカ類50個体の種同定をミトコンドリアDNA非コード領域の塩基配列で行った。49個体がシロイカ型と同じ系統であり、1個体がクアイカ型と同定された。シロイカ型の49個体は、ハプロタイプ数26、多様度が0.9575、塩基多様度が0.6336%で、ハプロタイプ多様度は日本本州、琉球列島と比較すると3倍大も大きくなった。 アオリイカ類シロイカ型について、群れの情報伝播機構について調べた。シロイカ型に脅威刺激と報酬刺激を提示し、記録映像より群れの全個体の反応率と反応時間を求めた。また、刺激に対して最初に反応を示した1個体を中心として、中心から外側に向かうエリアを設定して、エリアごとに個体の反応時間を求めた。群れの脅威刺激時の反応率と反応時間は40日齢で平均77.1%, 0.96秒, 70日齢で平均94.8%, 0.36秒, 100日齢で平均98.0%, 0.495秒, 報酬刺激時の反応率と反応時間は40日齢で平均31.3%, 1.65秒。70日齢で平均29.5%, 1.18秒, 100日齢で平均24.0%, 1.52秒であった。どの日齢においても、エリアごとの反応時間は中心から外側に向かい増加した。アオリイカの群れでは、群れ形成初期から情報が伝播され、それは群れ内で遠方に向けて次々と伝播されていると推定した。 クアイカより視物質抽出法によりロドプシンの最大吸収波長を測定した。これによりアカイカ、シロイカおよびクアイカの最大視感度は496、492および490 nmと確定された。アカイカの視感度は他の2種よりも長波長にシフトしていた。3種から網膜光吸収体レチノクロームを単離し、660塩基(219残基)の遺伝子断片を得た。3種間で塩基配列に違いがあるものの、レチノクローム遺伝子はロドプシン遺伝子よりも種間でよく保存されていると考えられた。
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