研究課題/領域番号 |
26292113
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
加藤 明 東京工業大学, バイオ研究基盤支援総合センター, 准教授 (40311336)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 魚類生理学 / イオントランスポーター / 電気生理学 / 海水適応 / 淡水適応 / 輸送上皮細胞 |
研究実績の概要 |
【1】 新規Cl-輸送活性の同定:ショウジョウバエの高塩濃度耐性に係るイオン輸送体との比較解析から、Slc9b1 の新たな活性を見出すことに偶然成功した。Slc9ファミリーは陽イオン交換輸送体のファミリーとして知られ、Slc9b1もNa+/H+交換輸送体だと信じられてきた。アフリカツメガエル卵母細胞の発現系を用いた電気生理学的な活性解析からショウジョウバエSlc9b1は強力なH+-Cl-共輸送体である事、かつNa+/H+交換輸送活性を持たない事が初めて明らかとなった(PNAS 112:11720-5, 2015)。これは予想外の全く新しい知見であり、魚類・哺乳動物のSlc9ファミリーの中にもCl-代謝を担うCl-輸送体が存在する可能性を示唆し、興味深い。魚類・哺乳動物の輸送上皮細胞に発現する様々なSlc9ファミリーの発現ベクターを構築し、Cl-輸送体の特定を急いでいる。 【2】 Mg2+排出機構の解析:海水魚腎臓ではSO42-やCa2+が管腔側細胞膜(apical膜)から直接尿中に排出されるのと対照的に,Mg2+は細胞内液胞に一度蓄えられてから尿中に開口放出される可能性が議論されている。この経路を詳細に解析するために、排出型Mg2+輸送体の候補であるSlc41ファミリーやCnnm (cyclin M) ファミリーの卵母細胞における発現系を新たに構築し、Mg2+電極やICP-MSを用いた活性解析手法の新規開発を試みた。また本年度はtwo-electrode voltage clamp(2電極電圧クランプ)装置を新たに導入し、イオンチャネルや起電性イオン輸送体の解析技術を充実させた。蛍光Mg2+指示薬を用いた海水魚腎尿細管のlive cell imaging に成功し、Mg2+分泌細胞は他の細胞よりも高い細胞内遊離Mg2+を有することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学内の昇任・移動に伴いより広いスペースを研究に使用できるようになったことから、実験装置の充実を図った。新規にtwo-electrode voltage clamp装置を導入し、これまでのイオン選択性電極法と組み合わせることでより詳細なイオン輸送体の活性解析が可能となった。本年度はイオン輸送体の活性解析を優先的に行い、一部の実験ではH+-Cl-共輸送活性の発見など、予想を上回る成果も得ている。今後、様々な陽イオン(Na+, K+, NH4+, Mg2+, H+)や陰イオン(Cl-, SO42-, B(OH)4-)輸送体、及びイオン輸送体複合体(メタボロン、トランスポートソーム)のより詳細な解析が可能となった事は意義深い。本プロジェクトの関連テーマはゲノム支援に採択され、次世代シークエンサーを用いた発現解析も同時に進めている。その結果から新たな仮説の提案を試みたい。メダカやゼブラフィッシュなど小型魚類を用いた解析技術の導入も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
【1】Nhe3の活性制御機構の解明(in vitroにおけるメタボロン仮説の検証):淡水魚塩類細胞の環境水側細胞膜(apical 膜)ではNhe3と炭酸脱水酵素(Carbonic anhydrase, CA)やアンモニアガスチャネル(Rhcg1)がNhe3と共局在もしくは複合体を形成し,Na+, H+, CO2, アンモニアガス・アンモニウムイオン輸送を協調的に行うという仮説(metabolon仮説)が提案されているが,in vitroで証明された例は無い。そこでアフリカツメガエル卵母細胞の発現系を用いて、タンパク質複合体によるイオン輸送活性を定量的に測定することで metabolon仮説の熱力学的な検証を行う。構成因子と言われているNhe3, Rhcg1, CAと,それに加えて様々な因子を組み合わせて発現させる。NH4+ もしくはCO2(細胞内を酸性化させる)依存的なNa+輸送活性の測定から,metabolonの形成を解析することができる。タンパク質同士の相互作用は免疫沈降法など生化学的な手法により解析する。 【2】 海水魚と淡水魚のMg2+ホメオスタシスを担うMg2+輸送体の解析:海水魚によるMg2+の腎排出を担う排出型Mg2+輸送体(Slc41ファミリーとCnnmファミリー)の解析を継続すると同時に、淡水魚のエラ・腎臓に発現するMg2+チャネル活性を電気生理学的な手法により解析する。また小型魚類(メダカやゼブラフィッシュ)を用いた個体レベルでの解析も同時に進めることで魚類のMg2+代謝の分子メカニズムを明らかにし、魚類生理学の分野に大きく貢献したい。さらに得られた魚類のデータをヒトの単純モデルという視点から精査することで、ヒト生理学・基礎医学分野における新たな発見も期待できる。
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