研究実績の概要 |
【1】細胞表面型Na+/Mg2+交換輸送体の活性解析:海水は約50 mM ものMg2+を含むため、海水魚は常にMg2+過剰摂取の危機に曝されている。体液Mg2+の恒常性を維持するために海水魚は腎尿細管を介して尿中にMg2+を活発に分泌・濃縮して排出する。これまでの研究から、海水魚腎臓ではMg2+輸送体のSlc41a1 が近位尿細管細胞の細胞内小胞に、Cnnm3 が同細胞の細胞膜に局在することを見出していた。これらは共にNa+/Mg2+交換輸送体としてMg2+排出を担うと考えられているが、その活性をin vitroで測定することがこれまで困難であった。今回Mg2+選択性微小電極を用いた実験手法を詳細に条件検討し、メフグCnnmのNa+/Mg2+交換輸送活性を検出することに初めて成功した。海水魚によるMg2+の腎排出機構を説明する上で重要な知見となった。 【2】陽イオン交換輸送体ファミリーの新機能の探索:ショウジョウバエの高塩濃度耐性を担うイオン輸送体の比較解析から、Slc9b1が強力なHCl共輸送体である事を2015年に報告した。Slc9は陽イオン交換輸送体として知られるが、他にもCl-輸送体が存在する可能性が示唆されたため、様々なSlc9ファミリーのCl-輸送活性を検討した。現時点でCl-輸送体として機能するSlc9ファミリーは魚類・哺乳動物からは見つかっておらず、今後も探索を継続する。小胞グルタミン酸トランスポーターの細胞膜上での新機能を解析する国際共同研究に参加し、Slc17a7が細胞膜上のNa+/H+交換輸送体として機能することを明らかにした(J Physiol 595:805-824, 2017)。また淡水魚エラに発現するSlc9ファミリーの電気生理学による解析からK+/H+交換輸送体が同定され、淡水中のK+吸収を担う可能性が示唆された。
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