研究課題/領域番号 |
26292117
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
石田 正昭 龍谷大学, 農学部, 教授 (80144228)
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研究分担者 |
納口 るり子 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00323246)
仙田 徹志 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (00325325)
西村 教子 公立鳥取環境大学, 経営学部, 教授 (00351875)
森 佳子 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (40346375)
粕谷 美砂子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (80369446)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 農村女性 / 経営参画 / 社会貢献 / 起業 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、農村女性の経営参画・起業・社会貢献・社会参加活動に関して、ワークライフバランスの観点から国際比較を行い、今後の方向性を展望するとともに、中間支援組織や行政の役割を明らかにすることである。研究に当たっては、日本とEU の実地調査と農林業センサス等の統計分析を行うことにより、定性的及び定量的な分析方法の両者を採用し、同時に事例調査による定点観測とジェンダー統計視点に基づく統計調査利用による全体動向把握の手法を併用する。本研究テーマや研究体制は、これまでの共同研究で進めてきた部分を基盤にするが、農村女性の社会貢献及びジェンダー論を専門とする新たな研究分担者を加えて、より包括的な研究実施を目的とする。また、本研究では、農村女性に関わる既存の統計データの収集や公的統計の分析を通して、農村女性の視点から見た統計調査の改善提案にもつなげることを意図している。 平成27年度は、平成26年度に引き続き、それぞれの分担者によって農村女性の就業、経営参画、起業、社会貢献等、本研究の主題にかかわる文献・資料収集、女性未来農業創造研究会等の関連する会合への参加による情報収集、日本の各地(行政、農村女性)やデンマーク、ドイツ、韓国への実地調査が行われた。また、数量分析では、JA女性部員に対するアンケート調査票の作成や、公的統計を用いた農村女性の就業、生活時間にかかわる分析が行われた。本研究組織との連携構築を目的として立ち上げたJC総研の「農村女性研究会」での研究会も含め、研究会を複数回開催し、討議を行い、一部の成果については学会報告が行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、平成26年度に引き続き、それぞれの分担者によって農村女性の就業、経営参画、起業、社会貢献等、本研究の主題にかかわる研究が行われた。主な成果は以下の通りである。 農村女性の起業にかかわる分析では、複数回における行政、農家への実地調査を行い、農村女性の起業に関する意向や、農村女性の起業にかかわる支援主体の役割について整理した。また、農村女性による起業活動実態をアンケート調査にて把握すべく、農村女性起業リストの整備を行った。リストは全国および一部地方に限定されるものの、かなり広範なリストを整備することができた。またJC総研「農村女性研究会」では、JA女性部員へのアンケート調査票を作成した。 公的統計を用いた分析では、就業構造基本調査の匿名データを用いて、配偶者女性の非就業を含めた就業形態および労働時間選択に関する分析を行い、有配偶女性の就業選択について農家と勤労世帯のような非農家との比較を行った。その結果、家族労働者などの非雇用の就業形態は、低賃金ではあるが、労働時間の柔軟性が確認された。このことは、家事や育児など自らのライフステージに合わせた労働が可能であることにより、就業を継続しやすいことを意味し、農家の配偶者女性においても、家事・育児と就業とのバランスを労働時間によって調整していることを示唆する結果が得られた。 一方、国内調査では先進的な女性起業の5事例を調査し、家族農業との折り合いの付け方や資金管理、税務申告の方法について、独立的でありながらも一体的な面を保持していることを確認した。同様の観点からデンマーク調査、ドイツ補完調査も行われた。デンマークでは、養豚、農家レストラン、農家民宿、有機農業などを実践する女性農業者の事例と支援のあり方を調査し、ドイツでは、女性を対象とした農業者教育と養豚経営の多角化としてバイオマス発電を導入した事例を調査した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、以下のような形で本研究を進めていく。 平成28年度は、基本的に、平成27年度までと同様の内容で研究を進めるが、日本各地の行政、農村女性、中間支援組織等への実地調査を行う。また、海外調査は平成26年度に実施したデンマークへの二次調査、もしくは別の国への調査を行う予定である(オランダを計画)。数量分析では、就業構造基本調査、社会生活基本調査の匿名データを用いた分析、農林業センサスを用いた分析を行うとともに、匿名データについては、それぞれの調査票情報の申請準備に着手する。また、農村女性にかかわる各種調査データの情報収集を行うとともに、平成26年度に収集した起業リストをもとに、アンケート調査を実施する。それぞれの研究成果は、随時学会報告等で公表していくが、これまでの3カ年のまとめのカンファレンスの実施も計画する。また、連携関係にあるJC総研の「農村女性研究会」ではJA女性部員アンケート調査結果を公表する。 平成29年度も、基本的に、過去3カ年と同様の内容で研究を進めるが、最終年度であるために、研究期間全体の成果のとりまとめを念頭においた活動となり、これまでの研究成果を学会等にて発表していくことが中心となる。 加えて、実態調査に当たってはこれまでに調査した事例を統一的な項目で整理し直し、必要に応じて補足調査を行う。また、女性農業者を対象とした表彰事業受賞者の授賞理由を整理・分析し、女性農業者の活動への注目が、時代と共にどのように変化してきたのかを明らかにする。両者の分析により、これまでに研究者や行政が農村女性のどのような活動に注目し評価してきたのかを明らかにする。28年度中には、平成26年度から3年間の研究を取りまとめ、学会報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の分担者において、農村女性のデータ整理などへの予算に対する執行の遅れがあったため、次年度の使用額が生じているが、それは、予見されたものであり、研究計画全体には影響はない。
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次年度使用額の使用計画 |
一部の分担者において、保留にしていた農村女性に関わるデータ整理等への予算は、アンケート調査の実施を予定しており、研究全体の計画の進捗を睨みつつ、平成28年度において、順次執行する予定である。
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