研究課題/領域番号 |
26292122
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
秋津 元輝 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00202531)
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研究分担者 |
波夛野 豪 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (30249370)
立川 雅司 茨城大学, 農学部, 教授 (40356324)
辻村 英之 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50303251)
谷口 吉光 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (60222121)
中村 麻理 名古屋文理大学, 健康科学部, 准教授 (60434635)
竹之内 裕文 静岡大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90374876)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 食倫理ワークショップ / Food Policy Council / 倫理的食選択行動 / 食育 / アクションリサーチ |
研究実績の概要 |
食農システムにおいて最大数のステークホルダーである消費者を起点とし、食選択をめぐる倫理的行動の拡大をめざして、住民参加をキーワードにアクションリサーチ手法を取り入れながら実践的に追究することが課題である。 本年度は、食選択行動に関するパイロット的ワークショップを静岡市と秋田市、およびロンドンの日本人主婦を対象に実施し、今後の本格的展開のための資料を収集した。他者に食を振る舞うことが食選択に配慮する重要な機会となっていること、および地産地消概念の幅広い浸透がとくに確認された。 オランダおよび英国への研究調査においては、倫理的食行動に関連する研究者の訪問、倫理的食選択を促すためのラベルを開発しているNGO、Food Policy Council、ファーマーズマーケット推進団体、持続的社会への転換に町ぐるみで取り組む事例などを訪問し、資料収集を実施した。とりわけ、食品の倫理的グレードをバーコード情報と連動させて、スマートフォンのアプリで閲覧できるシステムを進めるNGOにおいては、食品加工企業にいかに製造段階での情報を公開させ、透明性を確保することが重要であり、そのための交渉が大きな取組課題になることを確認した。 ワークショップを実施する際の参考文献として、『食と農の倫理を問い直す』を仮タイトルとする書籍の編集を本研究メンバーを中心として開始した。また、日本における食育の経過について、政策、学会、団体を対象として資料調査をおこない、資料集を作成した。これについては、ワーキングペーパーとして関係者と広く共有する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ワークショップに関して当初は手探りの状態であったが、何度か試行するうちに現代の食事情に関する情報を提供した上で、それをもとにワークショップを進めるやり方が適していることが判明し、次年度の研究計画に情報資料作成の内容を盛り込むことができた。 オランダ・英国での研究調査においては、研究的側面と運動的側面の両面において、倫理的食選択行動をめざす場合の課題や心構えを学ぶことができた。とくに、英国においては先駆的かつ第一線の研究者であるロンドン市立大学のTim Lang氏にインタビューをおこない、英国の現状を作り上げるのに20年の歳月がかかったことを強調され、持続的な研究実践活動の必要性を再確認した。 最終的な政策提言として、自治体ごとにFood Policy Councilの日本版である「食農未来委員会」(仮称)の設置をめざしているが、その第一歩として英国ブリストルにあるFood Policy Councilでの活動状況について資料収集することができ、翌年の北米での本格的なFood Policy Council調査につなげることができた。 倫理的食選択行動をを考える際に、これまで推進されてきた食育の現状を把握することが不可欠となるが、その基礎資料をワーキングペーパーのかたちでまとめ、メンバー全員が共有できる情報とした。 本研究メンバーが中心となって単行本の編集も進めており、食倫理について議論する場を設け、研究グループとして十分な意思疎通ができる環境を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に試験的に実施した食選択に関するワークショップの結果を受けて、個々のワークショップの導入段階において食に関するデータの提示が必要であることを痛感した。したがって、来年度はまず、食に関する基本データを収集して整理し、ワークショップでの効果的な提示方法について検討をおこなう。 本研究はアクションリサーチ手法を採用し、社会実践の意義も大きいが、研究成果を公表していくことも同時に重要である。そのため、先の食に関するデータの提示を起点とし、ワークショップでの議論の中で人びとの認識がどのように変化していくのかについて、学習過程や教育法の先行研究を検討することにより、論文化する道筋を探る。教育方法論については米国において研究が先行しているので、そこでの知見を整理する。同時に、そうした分野の研究が日本においてなぜ広がらないかも日本でワークショップ手法を用いる場合のポイントになるように思われるので、教育学関係者にもインタビュー等をおこない、研究を深める。 来年度はよりFood Policy Councilに焦点をしぼり、北米にて研究調査を実施する。とくに、そうした活動の出発点であるカナダのトロント市や、多様に展開する米国のFood Policy Councilの実態について情報収集し、日本での同様の組織の設立に向けて必要な知見を獲得する。 特定の地域を設定してワークショップを実施するにあたって、具体的な地域選定およびその地域でのステークホルダーの選定作業などをおこない、本格的食選択ワークショップ実施のための準備をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は大学が提供する国際化のための業務と旅程を結合することで、外国調査旅費を節約した。また、当初は参加予定の共同研究者が調査旅行に加われず、その分の旅費支出が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
そもそもの計画申請予算が削減されているので、繰り越した予算を利用して、実施を本来の計画に近づける。来年度は北米での調査研究を予定しており、繰り越した予算を使用することにより、できる限り多くのメンバーで現地調査をおこなう。
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