研究実績の概要 |
本研究の主要な目的は以下の通りである。 (1)地形・地理空間情報による塩分集積立地要因の分析と砂丘地・湖の立地特徴の分析。 (2)衛星画像から蒸発量分布を計算し、地域ブロックごとに砂丘地による地下水涵養量を推定する。 (3)内蒙古河套灌区を対象に、地下水の動態に関する現地調査を行い、砂丘とその周辺地域の水循環構造を明らかにし、砂丘の地下水涵養機能を定量的に評価する。 (1)の目的を達成するために、衛星画像、地形情報データを収集するとともに、灌漑区全体をカバーするように設定した移動経路周辺での写真撮影で土地利用の現状、土壌採取により塩分集積状況を把握した。土地利用8種(塩害草地,宅地,宅地土,水面,農地,塩害地,砂地)を,標高,標高差,傾斜,曲率,累積流量,用水路距離,排水路距離の計7変数としたNested Logitモデルで適合できることを示した。砂地ポリゴンの重心から7種の土地利用の出現する距離と方位角を分析した。砂地と湖の集塊的立地を確認した。(2)については、各ブロックおよび画素単位の水収支を各種土地利用面積率を説明変数とする重回帰分析を行って、灌区全体の広域水収支マップを作成し、砂丘の地下水涵養量を推定した。(3)については、過去2年間行ってきた2か所の砂丘地における地下水位の連続観測を継続するとともに、現地の土を用いて降雨浸潤試験、蒸発試験、温度勾配下での土壌水分移動実験を行い、基盤土である沖積土と比較して砂丘砂の水分移動特性の特徴を解明した。地下水位の変動は①年間を通じた長期的変動、②降雨イベントに伴う変動、③蒸発散に伴う日変動、から合成されていることが分かった。帯水層の比産出率を室内実験で決定し、砂丘中腹、砂丘下端、砂丘に隣接する塩害地における地下水涵養量と蒸発散量を計算した。それらを互いに比較し、砂丘が地下水を涵養する機能を有することを実証した。
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