研究課題/領域番号 |
26292130
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩渕 和則 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (00193764)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 再生可能エネルギー / バイオマス / 廃棄物再資源化 / 農業工学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、有機廃棄物を炭化しエネルギへ変換する技術の確立である。有機廃棄物は,家畜の排泄物や食品廃棄物に代表されるように,通常は85%以上の高水分である。有機廃棄物の賦存量は膨大であり,エネルギ化に貢献する貴重な資源という共通認識はあるものの,多大な乾燥エネルギを供給して乾燥・炭化するとエネルギ収支が負になり易い。申請者は加圧容器内の廃棄物自らが発する熱で品温を上昇させ,水の沸点へ到達させて乾燥し,さらには残った乾燥廃棄物を炭化できる省エネルギな燃料炭製造方法を発明した。一方その反応の詳細なメカニズムは明らかになっていない部分があり,これを明らかにし、廃棄物系バイオマスのエネルギ化技術を確立することを目的としている。 昨年度の報告書で言及したように,今年度予定していた溶存酸素測定装置は研究費査定額が低く,購入が不可能になった。このため初年度からの室内実験を含め,安定的な発火反応の解明がより重要と判断していることから,室内試験とフィールドにおける発火現象調査,加えて数値シミュレーションを加味した3つの研究を並行して行った。 自然発火現象が生じている現場で約1ヶ月に渡る温度およびガス濃度観測の結果,木質チップのみの堆積場でも好気性微生物による酸化反応熱によって昇温している特徴が観測され,水分吸着熱による昇温の可能性は低くなり,好気性微生物による酸化反応熱とそれに引き続き生じる化学反応による昇温という当初の仮説が正しい可能性が高くなった。また,化学反応による昇温については,当初の仮説である不完全燃焼による一酸化炭素の酸化による昇温という説を完全に裏付けるデータが得られず,仮説の検証作業を継続する必要がある。加えて数値計算によるシミュレーションを行ったところ,一酸化炭素以外の要因によって温度が著しく上昇することが示唆され,当初の予想以上の成果になる可能性が大きくなっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
自然発火現象が生じている現場で約1ヶ月に渡る温度およびガス濃度観測の結果,木質チップのみの堆積場でも好気性微生物による酸化反応熱によって昇温している特徴が観測され,水分吸着熱による昇温の可能性は低くなり,好気性微生物による酸化反応熱とそれに引き続き生じる化学反応による昇温という当初の仮説が正しい可能性が高くなった。微生物反応以降の昇温反応をについては,当初の仮説である不完全燃焼による一酸化炭素の酸化による昇温という説を完全に裏付けるデータが得らず,継続検討する必要があるが,バイオマス堆積層における熱と気体の流れのシミュレーションを行ったところ,一酸化炭素の影響以外の要因によっても材料状態によって著しく温度が上昇することが示唆され,これについてはフランスの研究者と情報を交換しながら計算を進めている。数値計算結果については新しい展開であるが,反応の本質に迫る可能性が大きく,当初の計画以上の進展と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の仮説である不完全燃焼による一酸化炭素の酸化による昇温という説を完全に裏付けるデータが得らず,継続検討する必要があるが,バイオマス堆積層における熱と気体の流れのシミュレーションを行ったところ一酸化炭素の影響以外の要因によっても温度が上昇することが示唆された。このため 1)これまでの仮説である一酸化炭素発生量と昇温の関係を継続して検討 2)同時に,新たな仮説である「一酸化炭素の影響以外の要因によっても温度が上昇する」についてもさらなる精度を高めるため,バイオマス堆積層における熱と気体の流れのシミュレーションのための発熱量,材料物性などの計測データの蓄積 を主に行い,反応メカニズムの解明を行う。
|