本研究の目的は、有機廃棄物を炭化しエネルギへ変換する技術の確立である。有機廃棄物は,家畜の排泄物や食品廃棄物に代表されるように,通常は85%以上の高水分である。有機廃棄物の賦存量は膨大であり,エネルギ化に貢献する貴重な資源という共通認識はあるものの,多大な乾燥エネルギを供給して乾燥・炭化するとエネルギ収支が負になり易い。申請者は廃棄物自らが発する熱で品温を上昇させ,乾燥し,さらには残った乾燥廃棄物を炭化できる省エネルギな燃料炭製造方法を見出したが,反応の詳細なメカニズムは明らかになっていない部分があるため,これを明らかにして廃棄物系バイオマスのエネルギ化技術を確立することを目的とした。 自然発火現象が生じている現場で数ヶ月間に渡る観測の結果,木質チップのみの堆積場でも好気性微生物による酸化反応熱によって昇温している特徴が観測された。水分吸着熱による昇温の可能性も考えられ,そのような既往の報告もあったが,水分約80%で反応が生じており,その可能性は棄却した。したがって好気性微生物による酸化反応熱とそれに引き続き生じる化学反応による昇温という当初の仮説が有力になり,まだ不完全ではあるが,数値計算によってもその現象がほぼ再現できるようになった。今後,材料の物性等をさらに充実することにより,より精度の高い数値計算による予測が可能と考えられる。また,この研究により,残された課題は,堆肥化における微生物反応とはやや異なる温度帯での活性を示す微生物群が支配していること,また微生物反応から発火へと接続するプロセスには,材料の三相率等の堆積状況,ガス輸送等が複雑に関連するため,このメカニズムを整理する必要がある。
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