研究課題/領域番号 |
26292131
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
梅津 一孝 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20203581)
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研究分担者 |
井原 一高 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50396256)
西田 武弘 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (70343986)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メタン発酵 / 畜産廃棄物 / 薬剤耐性菌 / 抗生物質 |
研究実績の概要 |
家畜糞尿に対する動物用抗菌剤(抗生物質)関連リスクは,抗生物質耐性菌と残留抗生物質に大別できる。我々はそれぞれのターゲットに対してメタン発酵によるリスク低減手法の確立を試みた。 セファゾリンは乳牛乳房炎の治療・予防のために使用されている。セファゾリン耐性菌は他の抗生物質に対する耐性菌と比較すると乳牛糞尿中で多く検出されたことから,乳牛糞尿とメタン発酵処理を行った消化液からセファゾリン耐性菌をそれぞれ300株分離し解析を行った。分離株をクロモアガーECC寒天培地で培養し,簡易的に分類を試みた結果,大腸菌,大腸菌群(coliform bacteria)およびその他のグラム陰性菌は,乳牛糞尿に比べメタン発酵消化液では減少していることが確認された。セファゾリン耐性分離株のβ-ラクタマーゼ産生能を検討する目的でクロモアガーESBL寒天培地にトランスファーし培養した結果,メタン発酵消化液ではβ-ラクタマーゼ産生シュードモナス属菌が増加していることが示唆された。 家畜糞尿に残存する抗生物質は,薬剤耐性菌の増長要因の一つと考えられる。廃棄乳等に含まれるセファゾリンに関しては免疫クロマトを利用した定性試験法があるが,畜産廃棄物に残留する抗生物質の定量に関する知見は限定的である。我々はまず固相抽出法とHPLC-UVの組み合わせによる家畜糞尿やメタン発酵消化液に含まれる抗生物質定量法を検討した。特定の抗生物質に対する定量手法を確立した上で,中温メタン発酵による乳牛糞尿に含有する抗生物質の分解特性を検討した。コントロールとの比較の結果,一部の抗生物質の濃度が低減されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連続式メタン発酵試験装置のトラブルはあったが、当初より計画していた抗生物質の使用と耐性菌出現の関係の評価、選択分離培地を用いたメタン発酵消化液中の残存細菌の分類および定量、残留抗生物質の定量系の開発は概ね予定通りに実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
乳牛糞尿中に存在するシュードモナス属菌およびβ-ラクタマーゼ産生シュードモナス属菌は中温メタン発酵処理により増加が認められたことから,ハイリスク耐性菌となる可能性が考えられた。これらの知見を踏まえた上で,セファゾリン耐性菌の菌種を絞り込むと共に,発酵温度を変えメタン発酵による耐性菌の低減手法の確立を目指す。家畜糞尿に含有する抗生物質に対しては,固相抽出法を工夫し定量手法を確立した上で,酪農で使用量の多い抗生物質に対しても対称を広げ,分解特性の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
連続式メタン発酵試験に使用していた発酵装置に不具合が生じ,装置の調整が必要となり,連続メタン発酵試験の再開までに日数を要したことと,一部の抗生物質の定量法の確立が難航し,分解試験の開始が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
連続メタン発酵による耐性菌低減試験に関しては,ラボスケールの発酵装置も併用し,効率的にデータを得られる体制を構築する。抗生物質の分解試験においては,固相抽出に必要なカートリッジ等の消耗品の購入に充当する。
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