研究課題
人工海水を純水で希釈し、改変chu13培地と同濃度の栄養塩を添加した希釈人工海水培地を使用し、Botryococcuss braunii B品種showa株、およびA品種 yamanaka株の培養を行い、人工海水濃度がB. brauniiの増殖速度、炭化水素回収性に与える影響について評価した。株ごとに炭化水素回収性の向上する塩濃度、増殖速度の低下する塩濃度は異なるが、希釈人工海水培地を用いた培養により炭化水素回収性が向上することが確認された。また、A品種 yamanaka株においても希釈人工海水で培養することによりコロニーの大型化が確認された。さらにA品種 yamanaka株の藻体表面の顕微鏡観察により、塩濃度の上昇とともにコロニー表面の形態の変化が大きくなることも確認された。希釈人工海水培地で培養した藻体に対して、フィルタープレス、重力ろ過の試験を行い、スリット幅100~150μmの金属製スクリーンを用いた重力ろ過でも水分80%まで脱水可能であることを確認した。一方、フィルタープレスによる脱水では、フィルターの目詰まりが発生するため、B. brauniiの回収、脱水にはフィルタープレスが適していないことが確認された。また、水分80%まで脱水した藻体からヘキサンを溶媒として炭化水素が回収できることも確認した。これまでに放射線突然変異法により取得した耐塩性B. braunii は非常に増殖速度が遅かった。そのため、より増殖速度の速い耐塩性B. braunii の取得に向けたスクリーニングを行っている
2: おおむね順調に進展している
放射線突然変異法による耐塩性B. braunii の育種においては、増殖速度、耐塩性ともに目標の形質をもつものは得られていないが、H27年度以降のテーマである脱水藻体からの炭化水素溶媒抽出試験の一部を本年度一部行うことができたため、全体としては概ね順調に進展している。
当初の計画通り、脱水藻体からの炭化水素溶媒抽出・溶媒分離プロセスの検討を行い、B. braunii の海水培養による炭化水素生産システムのエネルギー収支の評価に向けたデータの収集を行う。放射線突然変異法による耐塩性B. braunii の育種に関しては、引き続き、藻体への放射線照射、培養によるスクリーニングを行う。また、本年度の研究で、培地の塩濃度の上昇に伴って起こる藻体表面の変化がA品種 yamanaka株で確認された。この藻体表面の変化と炭化水素回収性向上の関連を検証する。B品種showa株では藻体表面の変化が光学顕微鏡では十分に確認できなかった。そこで、電子顕微鏡での表面観察を行い、A品種 yamanaka株と同様の変化が起こっているかを確認する。
放射線突然変異法により取得した耐塩性B. braunii は非常に増殖速度が遅かった。増殖速度の速い耐塩性B. braunii の取得に向けたスクリーニングを行っているところである。そのため本格的な培養に至らず、培養実験費用を一部次年度に持ち越した。
計画通りに、脱水藻体からの炭化水素溶媒抽出・溶媒分離プロセスの検討を行うとともに、放射線突然変異法による耐塩性B. braunii の育種に関して、スクリーニングと培養試験を実施する。
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