研究課題/領域番号 |
26292133
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
小林 研 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業技術革新工学研究センター企画部, 部長 (90391490)
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研究分担者 |
手島 司 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業技術革新工学研究センター労働・環境工学研究領域, 主任研究員 (10391509)
清水 浩 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50206207)
伊藤 史朗 愛媛県農林水産研究所, 企画環境部農業研究部, 主任研究員 (50504130)
林 茂彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業技術革新工学研究センター高度作業支援システム研究領域, ユニット長 (80391530)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 農業工学 / 生物・生体工学 / 知能機械 |
研究実績の概要 |
1 収穫ロボットへの糖度選別機能の追加については、反射方式と透過方式の糖度の推定精度を比較するため、両方式で糖度推定が可能な計測器を用いて各々の糖度推定精度を調べるとともに、自動計測に必要な果実赤道部と計測器の位置決め精度を調べた。この結果を受けて、分離型糖度計測装置および一体型糖度計測装置の両方に対応可能な、RGB-Depthカメラを用いた画像処理による計測位置のセンシング手法の構築について検討を行った。 2 機械受粉装置の利用技術では、27年度はピンポイント受粉に関する実験を実施した。三次元画像による花の認識は82.8%の精度であったが、着果率(それぞれ80果)は、加振時間2秒において17.5%(着果数14)、10秒において26.3%(着果数21)となり、以前にエスペックミック社にて手動で行った超音波による受粉実験時の着果率(59%)よりも低い値となった。本システムの原理は放射圧による花の加振であるが、この圧力を受ける面積との積で力が決まるため、花が正面を向いているときと横を向いているときでは、圧力を受ける断面積が大きく異なることが着果率が低い原因と考えられる。 3 光・温度環境制御と果実品質の関係解明では、遮光率などの条件が異なる環境下において栽培された愛媛県育成品種‘紅い雫’を対象に果実品質を調査した結果、糖度と果皮色調については影響がみられなかったが、果肉部色調や、果皮及び果肉の硬度については明らかな違いがみられ、光条件の違いによる影響が示唆された。果肉部色調や硬度における違いは、果実外観から肉眼によって判別することは困難であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 収穫ロボット一体型糖度選別機能の構築という目的に対して、分離型糖度計測装置および一体型糖度計測装置の両方に対応可能な計測システムを開発中であり、28年度のイチゴの収穫開始時期である11月頃までにシステム全体の構築が見込まれる。さらに、26年度までに検討してきた反射方式に加えて、27年度は透過方式による計測システムに必要な基礎的データも蓄積でき、順調な進捗状況と考える。 2 三次元計測による花の認識率は約83%となり、ほぼ当初の予定通りの数値を得た。また得られた三次元座標値を用いて、イチゴの花に向けて2秒と10秒という異なる加振時間で花を加振して着果率を測定した。27年度の実験による着果率は低い結果となったが、その原因は判明しており、28年度は着果率向上に向けて対応する。 3 光等の環境条件の違いによる果実品質への影響は、イチゴ‘紅い雫’を対象とした調査によって果肉部色調などの項目で顕著であることを確認できた。この品質項目は、肉眼による判別は困難であるが、過去の研究実績より可視・近赤外分光法を用いる非破壊計測により判別できる可能性が高く、今後、色素蓄積量に着目した研究に特化する。
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今後の研究の推進方策 |
1 分離型に加えて一体型糖度選別機能構築のためには、これまでに考慮していなかった果実の姿勢を考慮した果実と計測器の位置決めが必要である。このため、現在、RGB-Depthカメラで取得可能なカラー画像と距離画像を用いた画像処理による姿勢認識手法を開発中である。今後は、イチゴの模型果実を供試して姿勢認識手法の改良を行い、イチゴの収穫時期である11月ごろまでに収穫ロボットを模したロボットアームの制御と組み合わせて計測システムを完成させる。その後計測システムを用いた糖度のロボット計測精度についての試験を行う。 2 花の認識は前述のとおり82.8%の精度で行なえているので、花が正面を向いているのか、横を向いているのかを判断するアルゴリズムを考えて、横を向いているときには超音波の焦点サイズを小さくして放射圧を上げることで、花に作用する力を向上させることなどの対策が考えられる。また、超音波による加振前と加振後の雌蕊の状態をマイクロスコープによって撮影して、放射圧の強さと加振時間が受粉に与える影響を定量的に把握する予定である。 3 環境条件の違いはイチゴ果肉部の色素蓄積量に影響を及ぼすため、色素に着目した研究を進める。色素蓄積量を把握するためには可視・近赤外分光法を用いる非破壊計測の有効性を示すデータが取得できつつあるが、果実の内部品質の把握が目的であることから、透過性がある近赤外領域の光特性を注視し研究を進めることで品質安定化に資する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1 現在ある移動栽培装置について規模拡大を行う計画であったが、27年度に取った見積り費用が資材費や人件費の上昇で想定以上となり実行できなかったため。 2 当初の計画では三次元計測はCCDカメラを2台用いたステレオカメラシステムを独自に構築する予定であったが、安価な市販の三次元カメラが利用可能であることが判明し、画像処理関係の開発に関する消耗品40万円を28年度に回した。
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次年度使用額の使用計画 |
1 28年度予算を加えて可能であれば装置の規模拡大を行う。 2 画像処理関係の開発に関する消耗品を購入する予定である。
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