研究課題
前世紀末から今世紀にかけて様々な家畜の発生工学・遺伝子工学技術が編み出されて体細胞核クローン家畜や遺伝子改変家畜などが作出されるにいたってきた。しかし、いまだにこれらの成功率が低い。その原因のひとつとして、供する卵子(卵母細胞)の品質が低いことが挙げられるが、卵子品質評価を分子レベルで評価しようとした研究は未発達である。哺乳類の卵子は、胎児期に減数分裂の途中の複糸期の状態で休眠している。性成熟後、性周期毎に卵胞上皮細胞(顆粒層細胞)に包まれた卵子の一部が減数分裂を再開して発育・成熟する。この過程で99%以上が選択的に死滅して不都合な卵子が取除かれる機構が備えられているが、これには卵胞の顆粒層細胞のプログラム細胞死(アポトーシス)が支配的に関わっている。申請者らは、20年以上にわたって継続してきた選択的卵子死滅の分子制御機構の解明研究の成果を活用して、卵胞毎に選択的に死滅する卵子を判定し、排卵にいたる高品質な卵子のみを選んで家畜の発生工学などに供し得る評価システムを創出しようとしている。今年度、これまでに見いだしてきた卵胞の顆粒層細胞におけるアポトーシスシグナル阻害因子の発現を指標にすれば卵子の健常度を見極めることができるか否か検討をすすめるとともに、併行して新規な阻害因子の探索もすすめた。特に、個々の卵胞を実体顕微鏡下に切り出して分別し、卵胞毎に卵子の正常性、体外授精後の初期胚の発生の正常性、卵胞液の性状および同じ卵胞の顆粒層細胞におけるアポトーシス阻害因子の発現レベルとこれらとの関連性の精査したところ相関性が高いと考えられた。併行して家畜における簡便かつ高感度な判定システムの開発をすすめるとともに凍結保存、異種移植、卵子の体外成熟と体外受精および初期胚の体外培養からなるシステムの統合を進めた。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載したように概ね当初予定していたように研究は進捗して目的を達成した。
当初の課題申請時に作成した研究計画調書に基本的に従って研究を遂行する。但し、平成27年度から研究代表者の所属先が変更したので、様々な物品や標本の移動、ハード面の準備などで若干進捗が遅れる可能性がある。しかし極力すのようなことが起こらないように注力する。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 14件、 オープンアクセス 14件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (18件) (うち招待講演 3件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Biology of Reproduction
巻: 91 ページ: 1-10
Molecular Reproduction and Development
巻: 81 ページ: 646-654
doi: 10.1002/mrd.22332
Animal reproduction Science
巻: 151 ページ: 97-104
10.1016/j.anireprosci.2014.10.004
Journal of reproduction and Development
巻: 60 ページ: 173-178
巻: 60 ページ: 194-201
巻: 60 ページ: 150-154
Veterinary Research Communications
巻: 38 ページ: 1-10
Theriogenolog
巻: 82 ページ: 605-612
10.1016/j.theriogenology
The Thai Journal of Veterinary Medicine
巻: 44 ページ: 105-110
Journal of mammalian Ova research
巻: 31 ページ: 79-85
http://dx.doi.org/10.1274/jmor.31.79
Veterinary Journal
巻: 199 ページ: 131-137
LoS ONE
巻: 9 ページ: e88953
10.1371/journal.pone.0088953
New Food Industry
巻: 56 ページ: 45-50
Nucleus
巻: 5 ページ: 493-498
10.4161/19491034.2014.990858
Animal Science Journal
巻: 85 ページ: 468-480
Journal of Virology
巻: 88 ページ: 13352-13366
http://www.bokujo.a.u-tokyo.ac.jp/