研究課題/領域番号 |
26292138
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小櫃 剛人 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (30194632)
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研究分担者 |
黒川 勇三 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00234592)
杉野 利久 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (90363035)
川村 健介 広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (90523746)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 粗飼料 / クロロフィル / フィタン酸 / サイレージ / 反芻胃 |
研究実績の概要 |
本研究では、クロロフィルを構成するフィトールから生じるフィタン酸の反芻家畜での代謝調節機能や乳中フィタン酸含量への影響を明らかにすることを目的としている。平成26年度ではフィタン酸の生成要因の解析を中心に行った。 1.飼料中フィトール含量の変動要因解析 フィタン酸の前駆体である飼料中フィトールの変動要因を明らかにするために、イタリアンライグラスの生草およびサイレージについて成分含量を調査した。イタリアンライグラスの栽培草地において0、 60および 120 kgN/haの尿素を3月末に追肥した。穂ばらみ期と出穂期に収穫し、パウチ法でサイレージを調製した。生草のクロロフィル含量は窒素施肥量に応じて増加し、穂ばらみ期の方が出穂期より高かった。サイレージの総フィトール含量は窒素施肥量に応じて増加し、穂ばらみ期の方が出穂期より高かった。以上から、サイレージ中の総フィトール含量は施肥や収穫期による原料のクロロフィル含量の変動を反映することが判明した。また、サイレージ調製に伴いカロテノイド含量は減少したが、総フィトール含量はほとんど変化せず、サイレージ貯蔵中でのフィトールの損失は少ないことが示唆された。こうした成分変動は、反射光による分光スペクトルにも反映されていた。さらにこれらの調査を通じて、牧草中にクロロフィル以外のフィトール源が存在する可能性を示す新知見も得られた。 2.反芻胃内でのフィタン酸生成要因の解析 ルーメン内でのフィトールからフィタン酸への生成要因を明らかにするために、インビトロ試験によって、ルーメン液とフィトールを飼料とともに培養した際のフィタン酸生成量を検討した。大麦を基質とした場合に比べて、乾草を基質とした方が、添加したフィトールからのフィタン酸の生成率が高かったことから、ルーメン内でのフィタン酸の生成率は給与飼料の種類によって変動する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、クロロフィルを構成するフィトールから反芻胃内で生じるフィタン酸の反芻家畜における糖・脂質代謝の調節機能ならびに、乳中フィタン酸含量に影響を及ぼす要因を明らかにすることである。そのために、平成26年度では、飼料中のフィトール含量の変動や反芻胃内でのフィタン酸の生成反応の変動を明らかにすることとした。 飼料中フィトール含量の変動解析については、予定通り、施肥、刈取り時期、予乾程度の違いが材料草やサイレージ中のフィトール含量に及ぼす影響を明らかにすることができた。また、予定していなかった、サイーレージ貯蔵中のフィトール含量の経時変化についても明らかにすることができ、サイレージ中のフィトールの消長についての新たな知見を得ることができた。予定していた脂肪酸やトコフェロールの飼料中含量の変動については、現在検討中である。 反芻胃内でのフィタン酸の生成に関しては、予備的にin vitroでの試験を行った結果、フィタン酸生成速度が遅いことや、フィタン酸生成率は給与飼料の影響を受けることを明らかにすることができた。さらにin vitroにおいて諸条件の影響を検討する必要があったため、反芻胃内フィタン酸生成の要因解析については主にin vitroで検討を行い、実際にフィトールを動物に投与するin vivoでの試験については平成27年度に行うこととした。これらのことから、概ね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
飼料中のフィトール含量の変動に関しては、当初の予定に加えて、様々な茎葉飼料のクロロフィル含量やフィトール含量についての測定も行うことで、飼料中のフィトール含量の変動要因についての基礎的データーをさらに蓄積することとする。 反芻胃内でのフィタン酸生成に関しては、in vitroでの解析結果をもとに試験条件を設定し、in vivoでのルーメン内フィタン酸生成要因に関する試験を行うとともに、ヒツジの糖・脂質代謝に対するフィタン酸の影響を検討する。 乳牛に対するフィタン酸の影響に関しては、牧草サイレージあるいはトウモロコシサイレージを主とするTMRや施肥条件の異なる牧草サイレージからなるTMRなど、フィトール含量の異なるTMRを泌乳牛に給与する飼養試験を実施する。乳生産成績の他、血漿中の代謝物濃度や乳中の脂肪酸とフィタン酸濃度などを測定する。 以上のように、当初の予定通り、平成27年度以降は動物に対するフィタン酸の影響を中心に研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、ヒツジを用いたin vivoでのルーメン内フィタン酸生成に関する試験を行う予定でいたが、in vitroでのフィタン酸生成の試験を先に行い予備的な検討を行うこととした。そのため、経費に不足が生じる可能性があったため前倒し請求を行った。その後、in vitro試験での検討事項が多くなったため、in vivoでの試験を年度内に行うことができなくなり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度に実施できなかった、ルーメン内でのフィタン酸生成に関するin vivoでの試験を27年度に行うため、それに翌年度分とした経費を使用する予定である。
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