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2015 年度 実績報告書

クロロフィルから生じるフィタン酸による反芻家畜の代謝調節と生産物の機能性強化

研究課題

研究課題/領域番号 26292138
研究機関広島大学

研究代表者

小櫃 剛人  広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (30194632)

研究分担者 黒川 勇三  広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00234592)
杉野 利久  広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (90363035)
川村 健介  広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (90523746)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード粗飼料 / クロロフィル / フィタン酸 / フィトール / サイレージ / 乳牛
研究実績の概要

平成27年度では、ルーメン内でのフィタン酸の生成に及ぼす飼料の影響、ならびに粗飼料源の違いが乳牛の乳生産および血漿代謝物濃度に及ぼす影響について検討した。
1.ルーメン内フィタン酸生成に及ぼす飼料の影響
フィタン酸の前駆体である飼料中フィトール含量の違いが、ルーメン内でのフィタン酸生成に及ぼす影響について検討した。平成26年度に調製した窒素施肥水準および刈取り時期の異なるイタリアンライグラスの生草およびサイレージを発酵基質として、ヒツジから得たルーメン液を用いて、48時間のインビトロ培養試験を行った。生草およびサイレージともに、フィトール含量の高い高窒素施肥区および穂ばらみ期で、低窒素施肥および出穂期に比べて、培養後のフィタン酸生成量が多くなった。しかし、フィトール量に対するフィタン酸の生成率は15%程度で、飼料フィトールの70%程度がエステル体として残存した。このことから、ルーメン内でのフィタン酸生成量は、飼料中のフィトール含量に比例するが、フィトール自体も小腸に移行して吸収される可能性があることが示唆された。
2.粗飼料源の違いが乳牛の乳生産および血漿代謝物に及ぼす影響
フィトール含量の異なるイタリアンライグラスサイレージ(IS)とトウモロコシサイレージ(CS)を主な粗飼料源とするTMRを乳牛に給与し、乳生産成績と血漿代謝物濃度を比較した。泌乳牛16頭を用い、CSを乾物中30%含むTMRおよびISを20%含むTMRを20日ごとに切り替えて給与した。ISの方がCSに比べて、フィトール含量は約2倍高かった。乳量には飼料による違いはなかったが、乳蛋白率がIS給与で低下した。血漿中成分のうち、IS給与でグルコース濃度が低下し、ケトン体濃度が増加した。これらの違いは、サイレージのタンパク質や炭水化物の組成を反映しているとみられるが、フィトール含量の違いによる可能性も考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、クロロフィルを構成するフィトールから反芻胃内で生じるフィタン酸の反芻家畜における糖・脂質代謝の調節機能ならびに、乳中フィタン酸含量に影響を及ぼす要因を明らかにすることである。平成27年度では、飼料中のフィトール含量が高いほど、反芻胃内でのフィタン酸の生成量が増加することを、インビトロ試験で確認できた。牧草に多く含まれる長鎖不飽和脂肪酸の反芻胃内での変化も同時に検討することができた。また、飼料中フィトール量の違いと乳牛の血漿代謝物濃度との関連についても検討を行った。しかし、乳中フィタン酸含量の変動や、フィタン酸による糖・脂質代謝への影響に関しては、今後の検討事項となった。

今後の研究の推進方策

飼料中のフィトール含量の変動に関して、サイレージ調製中でのフィトール含量の変動は小さいことを明らかにしてきたが、今後はサイレージを調製する際に、乳酸菌およびギ酸を添加し、pHを低下させた場合のフィトール含量への影響について検討する。
また、フィタン酸の糖・脂質代謝への影響に関して、ヒツジのルーメン内へ生草レベル程度のフィトールを注入した場合での、十二指腸へのフィタン酸およびフィトールの移行量、グルコースや脂肪酸の代謝量、インスリン分泌やその糖・脂質代謝への作用について検討する。また、注入したフィトールが代謝されずに腸に移行することが予想されることから、糞中へのフィタン酸およびフィトール排泄量についても調べ、腸内でのフィトールの代謝についても検討する。
さらに、乳牛における乳中フィタン酸分泌に関して、引き続き、種々の飼料条件でのフィトール摂取量と乳中フィタン酸分泌量および代謝プロファイルとの関連を調べる。
28年度は研究分担者であった川村博士が転勤のため参画できなくなるが、当初の分担内容であった分光計測によるクロロフィル含量の評価や、3D画像による体形評価に関する研究は概ね終了したため、本年度の研究には影響はない。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していたフィトールの注入実験が、実験用動物の準備が間に合わず実施できなかったため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

動物を用いたin vivo実験での試薬購入費および分析機器の使用料に使用予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016 2015

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] 牧草の施肥水準と生育期がルーメン内でのフィタン酸生成に及ぼす影響2016

    • 著者名/発表者名
      呂 仁龍・Mabrouk EL-Sabagh・小櫃 剛人・杉野 利久
    • 学会等名
      日本草地学会石川大会
    • 発表場所
      石川県立大学、石川県野々市市
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-30
  • [学会発表] Evaluation of seasonal change of protein fractions in kudzu herbage2016

    • 著者名/発表者名
      Dang, H. L., Obitsu, T., Sugino, T., Lv, R.L.
    • 学会等名
      日本草地学会石川大会
    • 発表場所
      石川県立大学、石川県野々市市
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-30
  • [学会発表] Effects of fertilization levels and harvesting stages of grass silages on ruminal phytanic acid production in vitro2015

    • 著者名/発表者名
      Lv, R.L, Sato, M., EL-Sabagh, M., Obitsu, T. Sugino, T.
    • 学会等名
      10th Korea-Japan-China Joint Symposium on Rumen Metabolism and Physiology
    • 発表場所
      Sunchon National University, Suncheon, Korea
    • 年月日
      2015-08-03 – 2015-08-06
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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