研究課題/領域番号 |
26292140
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
松川 和嗣 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (00532160)
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研究分担者 |
市川 明彦 名城大学, 理工学部, 准教授 (20377823)
赤木 悟史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (70414696)
及川 俊徳 宮城県畜産試験場, その他部局等, 研究員 (70588962)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核移植 / ウシ / フリーズドライ細胞 / フリーズドライ精子 |
研究実績の概要 |
体細胞では、フリーズドライ (以下、FD) 緩衝液の種類、および体外発生培養液の交換時期が、核移植後の発生に与える影響を検討した。さらに、初期発生にかかわる遺伝子の発現量を核移植 (NT) および体外受精 (IVF) 胚で比較した。その結果、m-EGTAおよびNa-EGTAで調整したFD細胞のDNA損傷細胞割合は、それぞれ12および24%となり有意な差が認められた (P<0.05)。核移植後の胚盤胞発生率は20および0%となり、有意な差は認められなかったがNa-EGTAでは胚盤胞作出には至らなかった。さらに、Day2およびDay3区の胚盤胞発生率には有意な差は認められなかったものの (20% vs. 25%)、Day3区では胚盤胞の質の向上が認められた。また、NTおよびIVF胚のOct4の発現量には有意な差は認められなかったが、IFN-tau においてNTがIVFに比べ有意に低い値を示した。 精子では、FD後の精子DNAの損傷を抑制する条件についての検討をおこなった。細胞膜透過液で1時間処理した後に10 mM DTT添加細胞膜透過液で30分間処理し、さらに4 mM ジヨードサリチル酸リチウム添加細胞膜透過液で15分間処理することで、細胞膜の強固な精子でもコメットアッセイによる評価が可能となった。パーコール密度勾配遠心法によって回収した精子ではDNA損傷は観察されず、通常の遠心法では16.7%の損傷が確認された。Na-EGTAでは損傷は観察されず、m-EGTAでは1.67%の損傷が確認された緩慢凍結では損傷は観察されず、液体窒素による急速凍結では1.7%の損傷が確認された。GSH処理では損傷は観察されず、DTT処理では25%の損傷が確認された。以上より、ウシ融解精子をパーコール密度勾配遠心法によって洗浄し、GSHによる前処理後Na-EGTAに浮遊させ、緩慢に凍結し乾燥することでDNA損傷を抑制した凍結乾燥精子を調整することが可能となった。さらに、これらのFD精子を顕微授精することで8.5%の胚盤胞期胚発生率が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精子および体細胞でフリーズドライ後のDNA損傷が認められない技術を開発しており、恒常的に胚の作出が可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
フリーズドライ精子及びたい細胞由来の胚盤胞期胚を胚移植し、その体外発生能を評価する。また実用化に向けて、細胞の注入操作の自動化技術を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度得られた成果を、最終年度に論文投稿を予定したため。
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次年度使用額の使用計画 |
論文投稿における校閲および投稿費に使用する。
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