研究実績の概要 |
本研究では,ニワトリ卵白アルブミンの消化酵素処理画分PHOVAにおいて見いだされた脂肪酸合成酵素(FAS)阻害ペプチドの機能を明らかにし,PHOVAおよび含有ペプチドの多様な分野への応用を目指すことを目的としている。平成29年度は,本研究において確立した精製FASを用いた活性の評価系を活用して,多価不飽和脂肪酸(PUFA)によるFASの活性阻害の特性について調べた。まず,PUFA分子中の炭素数がFAS活性に及ぼす影響を検証したところ,オレイン酸(ω9,C18:1,Δ9)はFAS阻害剤セルレニンと同等の阻害作用を示したが,エイコセン酸(ω9,C20:1,Δ11)およびエルカ酸(ω9,C22:1,Δ13)は阻害作用を示さなかった。次に,二重結合の数がFAS活性に及ぼす影響を検証したところ,結合数が2個のエイコサジエン酸(ω6,C20:2,Δ11,14)はほとんど阻害作用を示さなかったが(FAS残存活性は91%),結合数が3個のエイコサトリエン酸(ETA, ω6,20:3,Δ8,11,14)になると,阻害作用が急激に強まり,FAS残存活性は22%となり,結合数が4個のアラキドン酸(ω6,C20:4,Δ5,8,11,14)が最も強い阻害作用を示し,FAS残存活性は12%となった。一方,二重結合数が5個のエイコサペンタエン酸(ω3,20:5,Δ5,8,11,14,17)になるとFAS残存活性は35%となり,阻害作用は弱まった。最後に,ETAの3つの異性体11,14,17-ETA(ω3),8,11,14-ETA(ω6),5,8,11-ETA(ω9)を用いて二重結合の位置がFAS活性に及ぼす影響を調べたところ,8,11,14-ETA(ω6)が最も強い阻害作用を示した。以上より,炭素数20個でω6位以降に二重結合を3個以上有するPUFAが強いFAS阻害作用を示すことが明らかとなった。
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